Jun潤

イノセンツのJun潤のレビュー・感想・評価

イノセンツ(2021年製作の映画)
3.6
2023.08.02

予告を見て気になった作品。
サイコキネシスのような力を手に入れた子ども達による、幼さ故により純粋な狂気を描いているような、おそらくビックリはさせてこないだろうと信じて今回鑑賞です、頼むぞマジで。

自閉症のアナを姉にもつ少女・イーダが、自然に囲まれた団地に引っ越してくる。
イーダはそこで同じ団地に暮らすベンと出会う。
ある日、ベンに面白いものを見せてあげると言われたイーダは、彼が手を使わずに瓶の蓋を動かす念力を目撃する。
イーダはベンと共に念力で遊びながら、次第に猟奇的な行動をとるようになっていく。
一方、同じ団地に暮らすアイシャは、言葉を発さないアナの思考を読み取ることができた。
夏休みを共に過ごしていく中で、4人は超能力を高めていくが、次第に子ども達の狂気は加速していく。

んん〜、なるほどなぁ〜。
ノスタルジックな雰囲気の中にスリラーがうまく入り込んでいましたね。
背景や価値観がハッキリしていて言動からそれらが滲み出てくる大人達のキャラクターに比べ、何もないからこそ些細なことをきっかけに、もしくは何もないところから突如として生まれてくる狂気の怖さ、不気味さが如実に出ていました。

しかし個人的には、もっとスリラースリラーしているものかと思っていたので、4人の家庭の事情や牧歌的なやりとりを長めに描いていて、中弛みを感じてしまったことも否めません。
子ども同士の喧嘩に入り込んでくる大人達という構図も嫌いじゃないですが、評価がグンと上がるほどの終盤に向けた描写の回収具合ではなかったかなという感じです。

アナを除く3人には、成長期の子どもに必要であるはずの親からの愛情が欠如しており、それが超能力の源だったのかは定かではありませんが、悲劇の原因の一つであったことはおそらく間違いないでしょうね。
そんな事情からのあの攻撃の仕方は、非常に不気味だけど非常に心を抉ってくる素晴らしい展開でした。

あとは終盤の演出方法がまた印象的で、舞台が昼間なのにも関わらず超能力の描写で一気に画面を暗くしたり、ラストバトルに関してもセリフなしに加えて大人達の表情を極力排して、多くの子ども達の純粋な表情のみで超能力の異様さとそこに入り込んでいる狂気を描いていたように感じました。
序盤からイーダがアナに対してしていた嫉妬が原因かのような行動に対する罰は下るのかどうかを明確にせず、観た人の解釈に任せてきたのも面白いですね。
Jun潤

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