御影LIN

死刑にいたる病の御影LINのネタバレレビュー・内容・結末

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

PG12

まず、映画の感想の前に、
これだけ言わせてください。
PG12では不十分だと感じました。
せめて R16+にすべきかと強く思いました。

理由を先につづっておきます。
殺人を扱う映画はだいたい2種に分かれていると思っています。
・殺人にいたる理由を是非でなく掘り下げている
・殺人せざるをえない状況に落とされている

この作品は、殺人を美化しています。
それは、ハイムラが魅力的に描かれていてかつ、殺人に対するなんら警告も因果応報もなく、更にはそこに至るまでの動機などもほぼ描写されていません。
にも関わらず、拷問や殺人のシーンは妙にリアルで刺激が強すぎます。
これは、まだ判断能力のない子供が見たら、強すぎる刺激に心奪われ、まるでダークヒーローかのようにハイムラに憧れかねません。
中二病という言葉も存在しますね。
14歳前後は病気に憧れるものです。
大抵の人はハイムラに狙われたら、こんな人が本当にいたら、と被害者側で映画を見ることと思いますが、こんな風に人を操れたら格好いいと思う人がいてもおかしくないと私は考えていました。
危険です。それだけは強く強く、警鐘を鳴らしておきたいなと思いました。
私は18歳未満の児童に見せるべきではないと強く感じました。
年齢を満たしていても人によっては誤解しかねないと思います。

さて、映画の感想です。
素晴らしい出来です。
凄い、としかいえません。
まず、上記の注意書きを入れなければいけないと思わせるほどのリアルさ、表現力の高さ、縁起の上手さ。本気の制作を観ました。

冒頭の拷問シーンは万力を使って指を押さえ、爪を剥がすのですが、剥がしたあとの血液の漏れかたも何とリアルなことか。
こういったものは女子のみの拷問だけで終わりそうなものですが、男子のシーンもリアルに描写しているのが高得点です。
最初にクライマックスを持ってくる構成がすごく好みでした。

そのあとは、犯人探しのサスペンスストーリーが続くわけですが、ここでとことん殺人鬼であるハイムラがどれだけ優秀で、有能で、魅力的かということをあの手この手で表現しています。
他作品を出す無礼を許していただきたいですが、魅力的な殺人鬼といえば、私の中では真賀田四季が真っ先に頭に浮かびます。
でもやはりあの作品の真賀田四季は、恐るべき天才であり人々を魅了するカリスマでありながら、一方で純粋な恋心を持つただの女性であるという掘り下げがあるからただの殺人鬼賛美ではないと理解できます。

ギリギリ、本作主人公の雅也は自分を含め周囲にいる人間すべてがハイムラに魅了もしくは操作されていく異常性に気づき、そして自分のことも嘘をついてまで操作しようとしていることにも気づき、心が離れていく様子を描いてはいますが、オチでその描写による効果は失われました。
主人公以外は全員がハイムラに騙されて操られているままで話は終わるのです。

ホラーとして完璧だとは思いました。
タイトルに病とあるので、ハイムラに人間性が必要ないどころか、入れてはいけないテーマだったのだろうなと思いますが、揺るぎない倫理観が求められる作品だと思います。
間違ってもハイムラを賞賛しない、それを理解しているという前提を100%視聴者任せにしている点がちょっと危険だと感じる部分です。

と、そんな風に感じる私にとっては、ハイムラというキャラクターに対しての『恐怖感』は皆無でした。
ホラーとしての役割は、私に対しては果たしてくれませんでしたね。
でも、すごく楽しめました。

十分に判断能力がある大人であれば、
色々な意味で楽しい作品だと思います。
皆さんがこれを見てどんな感想を抱くか、
とても気になっています。
御影LIN

御影LIN