たにたに

さがすのたにたにのレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
4.8
【娘は見ている】2022年14本目
日本人唯一、ポンジュノ作品の助監を務めた片山慎三監督の長編映画二作目。
どことなくポンジュノイズムも感じる。
傑作かと。

「さがす」というタイトル通り、失踪した父親を「さがす」娘の物語だ。
娘が突然消えた父親を探す中で、彼女は父親の本当の姿を"見つける"ことになる。

20円足りなくて万引きをした父親を迎えにスーパーまで駆ける娘の姿から場面は始まり、一瞬にして、だらしのない父親と、それを一蹴する強い娘という構図が理解できる。この父娘の関係性や性格を、ラストの演出に繋げてくるという人物背景のよく練られた構成が完璧すぎて、頭が上がらない。

よく日本のミステリー・サスペンス映画にある、何か起こりそうなシーンで不安を煽るBGMなどは全くなくて、基本的には床が軋む音やドアを開ける音などの生活音を利用している。むしろ、軽快な音楽やクラシックなどを利用し、人間の欲求を気持ち悪く見せている。

小物使いも秀逸だ。
襖に貼られた卓球のシール。
サークライン蛍光灯から吊り下げられてるビニール紐。
ホームランバーの当たり棒。
捜索願いの貼り紙。
マジックハンド。
パソコンに貼られたパスワード。
踏みつけられたガム。
これら全てが、作品の、そして登場人物の心情を表現する。

そして、佐藤二郎という俳優の唯一無二の存在感。彼のキャラクター性が、ちょっとした冗談ぽさを感じさせ、強弱のついたドラマ性のある作品になっている。

社会問題にまでしっかりと切り込んだ、バランスのとれた傑作中の傑作です。
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