へたれ

幻滅のへたれのレビュー・感想・評価

幻滅(2021年製作の映画)
3.5
良かったとこ1 プロダクションデザイン
19世紀の小新聞やカフェ文化を再現させるセットと小道具が良かった。歓楽街となっていた頃のパレ・ロワイヤルや、「犯罪通り」の劇場街の様子などもちゃんと表現していて、文学作品的な趣きがちゃんとあった。

良かったとこ2 ナレーションによるリズム
当時の出版や演劇事情が分からないと中身が薄いメロドラマになってしまうため、そこを補完するように畳み掛けるようなナレーションで当時の背景が説明される。このナレーションのスピードが映画全体のスピードを決めていて、マーティン・スコセッシのギャングものとかに近いスピード感があるのが良かった。原作を知らない観客のために、最初からこの話が悲劇であると宣言してしまうのも、この映画については効果的だった。
また、2時間半の上映時間がきっちり半々で栄光と没落に分かれているのも見やすさにつながっていた。

ダメだったとこ 浅い人物像
あらすじを走り抜けるような構成になっている結果、人物像には深掘りできなかった。たとえば、主人公のリュシアンは、最初から最後まで自信過剰で世間知らずというキャラクターが変わらないし、彼の恋人になるコラリーも悲劇の結末のために存在しているような扱い。
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