レイモンド

パワー・オブ・ザ・ドッグのレイモンドのネタバレレビュー・内容・結末

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

最近WOWOWででイエローストーンを見ていたこともあり、カンバーバッチさんのカウボーイてめずらしいなーくらいのノリで見始めたらなんだか雲行きが怪しい。
カンバーバッチさんが演じるフィル、とても良い役でこれは当たりですね。亡くなった後に髭を剃ってあげるじゃないですか、すると例のシャーロックの神経質そうな頭のよさそうなキリッとした顔が出てきますよね。雰囲気がピーターとよく似ていてちょっと驚いたというか最近ストレンジ先生の顔ばっかり見てたので忘れてました。(恋する相手がピーターという名前も運命なのか)
似てるのは顔の作りではなくて雰囲気ですよ。
死に際はすごく苦しかったそうだけどうっすら目が開いていてまだ夢を見てるような顔なんですよね。
髭もじゃの顔に自分のいろんな部分を隠して彼はずっと生きてきて、
突然ピーターみたいな若い頃の自分を思い出させるような頭がよくて芯の強さを感じさせる美青年が近くに現れてなかば羨ましい気持ちでもうストンと恋に落ちてしまったんだろうな。
そして頭がいいのでおそらく誰の仕業か勘づいたにちがいない、でもそれを言わずに死んじゃったんですね。自分の好きな人がまさか、って信じたくない気持ちでいっぱいで。

まず見終わって考えたのは父親はピーターが殺したのかなって事です。あと母親と共犯だろうか。
アル中の父親、まぁ中毒になったのは息子のせいなのかもしれない。はじめのほうでピーターが広告の切り抜きを集めた自作のノートをみせますね、右上には母親とよく似た髪型の女性、左下には髪の毛をきれいにオールバックにした男性がいます。ピーターはいつも櫛を持っていて髪を整えているのであれは自分の理想像でしょうか。そして母親のことをとても愛しています。たぶんやばいタイプのマザコンです。ノーマン・ベイツ的な。酒を飲んで母親に暴力を振るう父親は許せないでしょうね。絶許というやつです。
息子が櫛の歯を鳴らすのを母親はとても嫌がっているので彼女は犯人の事を薄々わかっているように見えます。登場人物の中であんなにきれいに髪を撫でつけているのはピーターぐらいです。
サイコパスなピーターとフィルが仲良くするのを警戒してはいるけれど牛の革を先住民に渡してしまったシーンでは確信犯というかグルというか、諦めもあるのでしょうか、母子なのでフィルを排除したいって部分は通じ合ってしまうのかも、、怖い。

タイトルのパワーオブザドッグ、これはカウボーイの事を指すのでしょう、家畜を追い立てる牧羊犬。ただ犬は人が飼いならすことができますが狼はそうもいきません。フィルが狼と言って慕っていたのはブロンコ・ヘンリー、ブロンコって名前なのにちょっと変だなって思ったのですが新世界と引き合わせてくれた人という意味もあるのかな。

一見ナヨっとした繊細そうなピーター。
羊の皮をかぶった狼ならぬウサギの皮をかぶった狼、というところでしょうか。世代の違う彼は都会に出て新しい事を学び、外科医としてだれにも飼いならされずその鋭い牙と爪を武器にしたたかに人生を歩んでいくのでしょう。

ちょっと前に急逝したギャスパー・ウリエルがハンニバル・レクター博士の若い頃を演じたハンニバルライジングって映画がありましたが
あれをいま撮影したならレクター博士の過去編にぴったりだったかもしれません。
ピーターも医者を目指していて学校で「博士」って呼ばれてるそうですし(たぶん友達が「教授」だよね)
ギャスパー・ウリエルほんと悲しいです。とても素敵な役者だったのに。

なかなか思わぬ展開でしたがサスペンス好きな私には嬉しい作品でした。
レイモンド

レイモンド