ptitsa

叫びとささやきのptitsaのレビュー・感想・評価

叫びとささやき(1972年製作の映画)
4.8
色彩と陰影の妙を楽しむ映画です.
ほとんどの場面が邸宅の内部ですが,一面赤の室内の調度と,白,もしくは黒の衣装を着る登場人物のコントラストがなんとも美しいです.また,単に色だけではなく,陰影をうまく使うことで,単色だけではなく様々な色味を表現することに成功しています.
場面転換すら黒ではなく赤一色に塗りつぶしていくという徹底ぶりで,まさに映画を観ているなという満足感を得ることができました.

また,会話のシーンであっても話し手と聞き手を同時に映すのではなく,極力話し手にフォーカスしてカメラを回しているのが印象的でした.それぞれに問題を抱えながらエゴを貫く姉妹たちと,明らかに聖母をイメージしている家政婦の対比が印象的でした.カーリンが下半身を傷つけて出血し,その血を顔に塗りたくるシーンは,壁の色とは違った赤がよく映える印象的なシーンでした.

庭園を散歩する三姉妹と家政婦のラストカットから,「叫びもささやきもかくて沈黙に帰した」というラストも,なんとも言えない余韻が残ります.
ptitsa

ptitsa