メル

叫びとささやきのメルのレビュー・感想・評価

叫びとささやき(1972年製作の映画)
3.8
ベルイマン作品は途中でギブアップした「第七の封印」を入れても未だ4つ目。

場面が変わる度に赤一色になる画面と、壁も床も赤い部屋は血縁関係を表しているのか…その辺は不明ですがとても衝撃的な作品でした。

広い屋敷で闘病生活を送る次女を看病する姉と妹と召使いのアンナ。

何に対しても愛情を感じない高慢で潔癖症の長女。
表向きは友好的だけど本心を明かさない強かな三女。
母の愛を感じられずに成長して、自分の命も風前の灯となった次女。

死んでも死に切れない…という表現があるけど、死体となった次女が「そばに居て!」と腕を掴んだりするのは恐怖というより切なさを感じてしまう。現世への心残りなのでしょう。
娘を幼いままに亡くしてしまった召使いがその遺体に添い寝する場面はキリストを抱く聖母マリアのようにも見えた。

楽しい思い出を残す事はとても大切。
それはその後の人生を生き抜くエネルギーになるから。
この世を去ろうとしている次女だけが「幸福の瞬間を味わうことができた」と何でもない日常に感謝しているのがとても皮肉だ。
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