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キリング・オブ・ケネス・チェンバレンのdeenityのレビュー・感想・評価

4.0
モーガン・フリーマンが制作総指揮を務めた本作。実際に起きた事件を再現し、リアルタイムで事が起きるまでを描いています。
タイトル通り、ケネス・チェンバレンが殺されるまでの経緯を描いた作品なので、オチ自体はわかっています。ただ、やはり内容の重苦しさと86分の上映時間ながら緊迫感のある進行に、疲労感を覚える鑑賞後感でした。

ケネスは双極性障害のある70歳の元軍人で、睡眠中に誤って緊急用の医療通報装置を作動させてしまい、安否確認のために3人の警官が朝の5時に駆けつける。警察は安否確認が目的だから姿さえ確認させてもらえればすぐに引き上げることを伝えるが、突然のことにケネスは狼狽し、過去のトラウマなどもあってか、返事はするもそれを拒否。それにより警察側も何か良からぬことでも隠しているのではないかと疑念が募り、時間の経過とともに高圧的な態度を取るようになっていく、とまあこういうストーリー。

まあ本作の何がポイントかってそもそものスタンスとしてはどちらも悪くはなかったということ。
警察だって何も取り締まるのが目的ではなく、ただの安否確認が目的なのであって、それこそ3分そこらで終わるはずの任務だったはず。
それが長時間待たされ頑なに面会を拒絶されたら、地域柄もあって疑いの目を向けるのは至極真っ当ではある。
ただ、それ故にエスカレートしていくノックや言葉かけに、ケネスの不安をより増幅されてしまったわけで、結果的に両者の心理が反発し合って最悪の悲劇に繋がってしまうわけですね。

もちろん本当に悪事を働いていたなら、自ら通報装置を作動させるようなことはあり得ないわけですが、冷静な判断を失ってしまうだけの苛立ちであったり先入観であったりっていうのは、あのシチュエーションならわからなくはないかなとも思えます。
ただ、問題はどうすればよかったかってことであって、そのアンサーが新米警官のような人権や個性に対して配慮できるフラットな視点を持つことなんでしょうね。

とはいえ彼の言う通りにあのまま引き下がるのだけがすべて正しいとは限らないわけで、もし何か企みがあったとしてその後の惨事が生まれた場合、別の命が失われたり責任問題にもなってしまったりするのでしょうし、一概にこれが正解なんていう対応はわからないと思います。
ただ少なくともこういう悲劇が起きたにも関わらず、警察側が何も責任を取らされないというのは違うと思いますし、結局のところ権力者だけが得をするような社会は見つめ直していくべきだと思いました。
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