パピヨン

君は行く先を知らないのパピヨンのレビュー・感想・評価

君は行く先を知らない(2021年製作の映画)
3.9
パナー·パナヒ監督の長編デビュー作は素晴らしいスタートダッシュを見せてくれました。こんなに切ない家族のロードムービーは今まで出会ったことありません。
イランの広大な大地を車で旅をする四人家族は、足にギプスをした父は後部座席ではしゃぎまくる幼い次男と格闘中。助手席の母は流れている歌謡曲にあわせ体をくねらせていて、成人した長男は黙々とハンドルを握っています。やがて車はトルコ国境近くの草原に到着しますが、そこで両親は羊飼いや覆面を被った男たちと何やら交渉をし、長男は旅人として村に迎えられるのですが····。
幼い次男同様に「行く先を知らない」私たち観客もまた、家族がどこへ向かっているのか?目的は何なのか?想像しながらの鑑賞でした。次男が隠して持っていた携帯電話を両親が捨て、常に尾行されていないか怯えながらの旅は、長男との別れが「行く先」であり「目的」のようです。バイクに乗り覆面を被った怪しげな男たちは、長男を国外逃亡させるための段取りを説明したりしています。
大草原の丘に小さな小さないくつもの人影が、ロングショットで見せられる風景は全てを語っているような。最後の最後まで、長男が国外逃亡しなければならない理由は示されておらず、恐らく政府の本作品への検閲をかわすためのものでしょうか。
生まれてくる国は選べないけど、恵まれた環境はその中に居ると気付けない様ですね。
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