KOUSAKA

あなたの顔の前にのKOUSAKAのレビュー・感想・評価

あなたの顔の前に(2020年製作の映画)
4.5
ホン・サンス監督の勢いが止まらない😵

キャリア26年ですでに27作(!)のフィルモグラフィーという多作ぶりにも関わらず、またまた傑作を生み出してくれました。

特にこの『あなたの顔の前に』は、初めて(ある意味ホン・サンス監督にとって「年相応」とも言える)「老い」や「死」がテーマになっていて、それゆえいつも以上に深いドラマ性を感じさせてくれるところが、ホン・サンス監督作品としては新鮮でした。

終盤で判明する『あなたの顔の前に』というタイトルの意味も、ホン・サンスらしくない(?)「滋味溢れるような優しさ」を強く感じました。

アーバンタイトルの時点で、思わず(心の中で)快哉を叫んだんやけど、部屋の外の風景を細かい網戸越しに映すことで、ビルやマンションをドット絵のように見せる演出が秀逸で、アメリカ暮らしをしていた元女優サンオクにとって、この「韓国の風景」が「どこか暖かく懐かしい、見慣れた故郷の風景」であることを、ビジュアル一発で表現し切っています。

「ホン・サンスユニバース」というキーワードは今作でも健在で、ホン・サンス作品の常連俳優が脇役で登場するたびにテンションが上がりました😊

クォン・ヘヒョやキム・セビョクはもちろんのこと、2021年公開の傑作『逃げた女』の、先輩とその同居人役だったソ・ヨンファ&イ・ユンミが通行人コンビとしてしれっと登場したり、同じく『逃げた女』でクセのある「猫クレーム男」を演じたシン・ソクホが、主人公の甥スンウォン役で登場して、相変わらず「パッと見はまともなんだけど何かクセがある」という絶妙な演技を見せてくれました😆(シン・ソクホは同時公開の『イントロダクション』では何と主役で登場!)

好きなシーンはたくさんありますが、元女優の主人公サンオク(イ・ヘヨン)と、映画監督のソン・ジェウォン(クォン・ヘヒョ)の2人が繰り広げる長回しの会話シーンは特に素晴らしく、今作をより一層の高みに到達させてくれた名シーンだと思います。

すでに撮り終えているという『小説家の映画(仮題)』も楽しみです。早く見たい‼️
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