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オッペンハイマーのHALのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
久しぶりのジャスト3時間映画。作品賞をとっただけあって映画から湧き上がる熱量がもの凄い。有無を言わせぬ説得力がある。
ただ、前半の1時間と後半の1時間はほとんどが会話劇なのでオッペンハイマー のたどった歴史がわかってないと見続けるのにかなりの持久力が必要となる映画。
さらに前半の1時間は自分も含めて科学と物理にうとい人間にとってはかなりわかりにくいはず。居眠りする人がいても全然おかしくない。
私が居眠りせずに見れた理由は主役と助演者たちのまさに演技合戦があったればこそ。

根っからの嫌われ者をやった助演男優賞のロバート ・ダウニー・ジュニアが本当にうまい。この時はメソッド演技に徹底したそうで、まさに内面から嫌われ者になりきったそうだ。ちなみにロバートは脚本を読んだ時この映画は失敗すると思ったそうだ。
主演男優賞のキリアンと本当にいい勝負。この映画は二人の実力俳優をキャスティングした時点で6割が完成したと言ってもいいだろう。
大統領役をなんとゲイリー・オールドマンがやっていることをキャストスーパーを見て驚いた。友情出演というものか。
ロバート ・ダウニーのそばにいた若い男優、見たことあると思ったら『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』で主役をやってたオールデン・エーレンライクだった。今は脇役で立派に生きていた。

有名な原爆実験がものすごい。爆発映像のしばらく後にものすごい爆発音がするところがリアリティありすぎ。原爆実験映像はどうやってやったのかわからないほど。
「シーツを家に入れるな」という言葉がトリニティ実験の暗号とは知らなかった。


そして、日本にその原爆が落とされた後の研究員たちの拍手喝采のシーンは日本人として見ていて気分悪かった。何十万人の罪のない人々を殺しといて何が拍手喝采だ。ふざけるな。その中でオッペンハイマー だけは微妙な表情をしていたのは逆に救われた。

後半の1時間はほとんどがオッペンハイマー 事件の裁判ドラマぶっ続け。これも歴史をわかってないと見続けるのに忍耐がいる。

個人的にただ一つこの映画のいただけなかったとこは映画音楽がなりすぎ。地味な会話劇だから音楽鳴らしたい気はわかるが鳴らしすぎると完璧に興ざめする。うるさく感じたとこも多々あり。
なのでこの映画がノーラン映画のベストとは個人的には思わない。あえていうなら物理や科学に精通した玄人向け。または役者として食べて行こうと思ってる人向け。
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