よしまる

BLUE GIANTのよしまるのレビュー・感想・評価

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
4.7
今年に入って2023年に観た洋画のランキングを勝手にお届けしてきまして、邦画やアニメは省いてたのでササっとレビューしておきます。

2023年の泣けるアニメと言えばもうこれで優勝でいいでしょう。

原作はちょうどこの映画で書かれたところは読んでいること、そしてボク自身お遊びながらバンドでサックスをやっていた(ただしJAZZではない)こともあって、いったいどんな音を奏でてくれるのだろうかと楽しみにしてました。

上原ひろみさんが音楽監督ということで、ピアノに力点が置かれるのかな、という予想は半分当たり、作品そのものが3ピースのうちのピアニストを主役に据えた作りになっていました。一方でサックスは若手の
馬場智章さんを起用。矢野沙織さんに続いて報道ステーションのテーマ曲で印象的なフレーズを吹いていた方と言えば聴かれたことのある方も多いでしょう。

ご本人は、自分の色を出さず大になり切るのが難しかったとおっしゃってますが、いやいや、キレイにアンサンブルを奏でるのではなく、良い意味でピアノに寄り添わない熱い音を届けてくださって大満足です。
JAZZなんて、特にインプロビゼーションとなると敷居が高いと思われる方も多いでしょうけれど、理屈と作法とか何もないです。ただ流れる音に身をまかせれば良いだけのこと。けれどもこれを観て胸が熱くならなければもうJAZZとはご縁が無かったとあきらめましょう。

原作の時から、ちょっとご都合主義に過ぎませんかという声は無くもなかったですが、さらに輪をかけてびっくりな展開が待っています。ところがこれが泣ける。熱い。
コミックス10巻を2時間に詰めてますので当然内容は駆け足、人物描写は端折りも多いのは間違いありません。それでも初見にも分かりやすくキャラクターを作り上げ、最後にはそれぞれに思い入れを持って演奏を見守らせる脚本は素晴らしかったです。

感心するのは、それでいて演奏シーンはここぞというところはしっかり聴かせてくれたところ。ダイジェストにしてしまわず平気で5分とか曲に割くというのは、実写の音楽映画にも是非見習ってほしいくらいでした。かつ、あれもこれもと詰め込んで3時間とかの長尺になるとそれはそれでしんどい。サッと観てグッと泣いてスカッと終わる、原作付き映画の理想的な仕上がりだと思います。

さて、ネットでの評価をウロウロ流し見してみますと、演奏シーンのCGに拒否反応を示す方が思いのほか多い。まあそういう意見は目立つので、たぶん普通に感動して泣けた人の方が圧倒的多数かとは思うのですが、長年様々な酷いアニメも観てきたつもりの自分には全然許容範囲、むしろ飽きさせない工夫をめちゃくちゃ頑張っていたと評価したいです。

これは先に録音された音源に合わせてアニメを作っている事も奏功しており、まず音ありき、そこに身体を委ねるに当たってのBGVとしては前に出すぎす、視覚ばかりに気を囚われないという点でとても良かったです。
アニメなんだから絵も大事、わかります。でも大丈夫、ふだんアニメもJAZZも興味無いわって方には何ら問題なく楽しめることでしょう。
(まあ文句言う方の気持ちもわかります。ボクは特撮大好きですが、シン・ゴジラのCGとか許せないです笑笑)

CGや俳優ボイスや駆け足展開など引っかかるところがあったとしても、有り余るパワーで押し切り力ずくで感動させてくれる、これはアニメーション映画だけに許された楽しみ方かと思います。
3月にはアマプラ見放題も始まりますので、ためらってきた方はこの機会にぜひ!