もるがな

ブラック・フォンのもるがなのレビュー・感想・評価

ブラック・フォン(2022年製作の映画)
4.1
連続児童誘拐犯に攫われた主人公の少年。断線した黒電話が突如鳴り響き、電話口からは殺された被害者の声が……。圧倒的恐怖の中、聞こえる死者の声を頼りに少年は決死の脱出を図る!

ジュブナイル・ホラーとしてはかなりの良作。単なる監禁スリラーではなく、電話から聞こえる死者の声をヒントにするという一捻り加えたシチュエーションが面白い。ヒントとは言いつつも全員が犠牲者ということは即ち失敗しているのと同義であり、正解かどうかわからないというのはまさに設定の妙だろう。

ホラーとしての恐怖感はそこまでではないものの、ジュブナイル部分はほぼ完璧であり、妹含めた主人公周りの少年少女の描き方も素晴らしく、これ単独でも引き込まれるぐらい話の雰囲気作りに一役買っている。

惜しむらくはやや超常現象設定が盛りすぎにも感じるところで、黒電話は核となる設定なのでいいとしても、妹の予知夢は良くも悪くも外堀を埋めるに留まってしまった印象。それでも話のダイナミズムには十分に寄与しており、声ではなく電話というオブジェクトまで使い倒したのはクドい味付けのようにも感じるかもしれないが、ブラック・フォンのタイトルに相応しい擦りっぷりであり、特にクライマックスの怒涛の勢いとカタルシスはまさにジュブナイルらしい爽快感があってとてもよかった。

キング作品らしいなと思って鑑賞していたわけだが、原作がキングの息子のジョー・ヒルと知って腑に落ちた感じがあり、黒い風船のオマージュもニヤリとさせられてしまった。
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