yukihiro084

カッコーの巣の上でのyukihiro084のレビュー・感想・評価

カッコーの巣の上で(1975年製作の映画)
5.0
何故だろう?
映画俳優と言われて、
頭に浮かぶのは、70年代の
作品の俳優ばかりだ。

(レニー・ブルース)の
ダスティン・ホフマン、
(フレンチ・コネクション)の
ジーン・ハックマン、
(タクシー・ドライバー)の
ロバート・デニーロ、
(狼たちの午後)の
アル・パチーノ、
(カッコーの巣の上で)の
ジャック・ニコルソン。
この5人が同世代に生き、
しのぎを削っていたと思うと、
ゾクゾクする。
リアルタイムで観ていた訳では
ないが、それでも驚く。
沸騰するような熱量を持った
役者バカたちが、毎年のように
伝説を作っていったんだ。
さしずめ、毎年(ジョーカー)の
ホアキンの演技を観ているような
ものだ。どんな時代だよ、と思う。
クリント・イーストウッドも
ここに入ってもよいが、やはり違う。
この5人はきっと、悪魔でも喜んで
演じるだろう。そして最高の悪魔を
見せてくれるはずだ。

カッコーの巣の上で。
すでにオスカー候補常連だった
ジャック・ニコルソンが、
(ライ麦畑でつかまえて)と並んで
バイブルと言われた原作の映画化に
主演して、見事、主演男優賞に輝いた。
(狼たちの午後)のアル・パチーノを
破っての受賞だった。

ジャック・ニコルソン演じる
マクマーフィーがとにかく魅力的だ。
喋りだしたら、ずっと見てしまう。
笑った笑顔がチャーミングで、
マジかよって時の表情もたまらない。
マクマーフィーは空気を読まない。
忖度することない。誤魔化したりも
しない。当然の疑問を口にする。
人生を謳歌しろよ、と
精神病院のど真ん中で言う。
仲間たち相手にニンマリ笑う。
昔から知ってる地元の仲間のように
言葉を交わす。一緒に笑う。
一緒に歓喜の声をあげる。

人間らしさとは、尊厳とは。
生命力溢れるマクマーフィーに
感化されてゆく仲間たち。

好きなシーンはたくさんある。
別に観てもいいし、観なくてもいい。
ただ語りたくなる作品なんだと思う。
どう思った?って。あのラストに
ついてとか。
ここ数日、この作品をよく考える。

僕はこの国の総理大臣が好きではない。
ずっと、信頼出来ない人。
普通に笑顔で嘘をつける人。
ずっと、そう思っているし、
それは確信に変わっている。
みんなそんなに彼のどこがいいのか
理解出来ないのだけど、彼は長いこと
権力の座に居座り続けている。
どんなに増税されても、
どんなに憲法を拡大解釈しても、
どんなに国会で嘘の答弁を重ねても、
彼は糾弾されることはない。
月曜日からうちの息子は学童だ。
そもそも総理大臣にあんなことを言う
権限などないはずだが、まかり通って
しまう。憲法にも、司法にも、
そして教育機関にも口を出す。
前日観た、バイスを思い出す。
いろんな連絡は昨日夕方遅めに来た。
先生との残りの日々はあっさり
なくなった。ちょっとした
お別れ会みたくなって、
みんな泣いたんだ。と息子は朝、
僕に言った。そうか、と僕は
息子を優しくハグをした。
インフルエンザで年間3000人もの
人が死んでいるというのに、
誰も気にも留めないのに、
デマひとつでトイレットペーパーが
なくなるこの国のことを、
僕は息子にどう説明すればいいのか。

違和感は拭えない。
僕は飼い慣らされたくないし、
これからも疑い続けると思う。
世界はインチキばっかりだから。

今だからこそ、
この作品はとても必要に思える。
そして、語り合いたい。

自由とは、尊厳とは、人間らしさとは。
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