パリ・オペラ座バレエ シネマ「ジェローム・ロビンズ・トリビュート」の作品情報・感想・評価

「パリ・オペラ座バレエ シネマ「ジェローム・ロビンズ・トリビュート」」に投稿された感想・評価

くりふ

くりふの感想・評価

4.0
【牧神の夢みる午後】

果たしてこれを映画と呼ぶべきかは謎ですが(笑)、作品ページがあるので投稿します。

ジェローム・ロビンズは、フレッド・アステアに憧れて、まずダンサーを志した人なので、元々、映画とは縁深いようですが。

コロナ以降、バレエの生舞台からもすっかり遠のいちゃったなあ…と思っていた所でこの上映を知り、あのロビンズ版「牧神の午後」 を、アマンディーヌ・アルビッソンのニンフ役で見られるなら貴重だし!と行ってきました。

先日、デ・パルマ『パッション』の感想にコメント頂いたこともあり。あの映画で「牧神の午後」が実に真っ当な使われ方をしていたのを思い出し、また見たくなったので。

ダンスの映像記録って、ダンサーが発する“気”までは残せないので、本物を見たことにはなりませんが、一流の舞台なら、それでも見応えがあります。大画面だと生舞台に近いし。今回、解像度は意外と低かったですが。

ジェローム・ロビンズ作品史からの4演目。パリ・オペラ座による2018年の名演集。

★「ファンシー・フリー」

『踊る大紐育』の元となった、振付師としての初仕事。1944年作。戦時中に生まれたのですね。どうりで、慰問的要素を感じる展開。休暇中の水兵三人組による、要は酒場でのナンパと乱痴気騒ぎなのですが、さすがパリ・オペラ座だと、洒脱な方に流れていきます。

ナンパがセクハラの域なのが、時代を感じます。オチがそれを帳消しにはするのですが。しかし女性ダンサーの美脚と、流麗な舞いには見惚れるしかありません。

で、乱痴気騒ぎからいつしか、人生って楽しいな、との高みに押し上げられているのです。

★「ダンス組曲」

マチアス・エイマンによる、ソロ名人芸を堪能する作品。名ダンサーって、先端の美しさまで心が行き届いているのがスゴイが、この演目でも、指先、つま先の動きまでが素晴らしい。特に足の方は、身体の重みを支えながらも、ここまで軽々と舞えるのかと。男の体で。

★「牧神の午後」

ダンススタジオを舞台にして、牧神風ダンサーと、ニンフ風ダンサーが、客席側を架空の鏡に見立てた摩訶不思議な空間で、なめらかに、少し淫靡に対峙する。

ダンサーらは自分を見つめるナルシスな視線、自身を検証する踊り手の視線、異性に惹かれる求愛の視線…幾つものそれを鏡にぶつけます。 男女は互いに見つめ触れ合うこともしますが、鏡の中での出会いから、殆ど鏡を通して交わるんですね。そして最後は…

「エトワール・ガラ2014」でこの生舞台を見た時は、「幸福なディスコミュニケーション」という言葉が浮かんだのですが…酔います。まるで白日夢をみたような後味です。

1953年作。50年代で既にコレ!…ゼンゼン古びていない。青い基調の舞台美術も、繁殖力旺盛の筈の牧神物語に鎮静効果をもたらし実に効果的で、浸ってしまいます。

デ・パルマ『パッション』ではこの演目を、視線のサスペンスをさらに撹乱させる装置として、実に巧く取り込んでいました。

★ 「グラス・ピーシズ」

初演は1983年とのことですが、聞けばスグわかるフィリップ・グラスの反復音楽を使って、こんな記号的、マスゲーム的面白さも追求していたのですね。

面白かったのですが…やっぱり、映像では肉体のリアルが後退してしまい、映像効果としてどうなのか、が先に、気になってしまう。

幾何学的群舞なら、何十年も前のバークレー調ミュージカルの方がスペクタクルだな、とか、複雑な動きが交錯する面白さなら、少し前、1981年のリプチンスキー『タンゴ』の方が、驚きがあった、とか。…こうなってしまうのが、映像のみでの欠点。個人的視点では。

…等々、さまざま、想いは湧きましたが、貴重な体験であったことは間違いないです。

<2022.6.28記>
全体としてストーリーにあまり興味が湧かなかったが、とにかくダンスがすごい。
KUBO

KUBOの感想・評価

4.0
今日の試写会は、パリ・オペラ座バレエ シネマ『ジェローム・ロビンズ・トリビュート』。

あの『ウエストサイド・ストーリー』の振り付けをしたことでも有名な偉大なる振付家ジェローム・ロビンスの生誕100年を記念してパリ・オペラ座で行われたバレエの祭典。

構成は何幕かに分かれるが、最初の「ファンシー・フリー」はミュージカル黄金期の『踊る大紐育』の元となった水兵と美女のコミカルなダンス。バレエと言っても、パントマイムとバレエを組み合わせたようなコンテンポラリーダンスで、1918年に生まれた人のバレエの振付とはとても思えない自由さ。

二幕目はチェロとダンサーの一対一でのコラボ「ダンス組曲」。

注目したのがラストの「グラス・ピーシーズ」。舞台狭しと大人数のダンサーたちがパターンを描くようにくり広げる群舞は、先日見たデヴィッド・バーンの『アメリカン・ユートピア』を思い出した。こういうベースがあるから、ああいうステージを思いつくんだろうな。何にしても、ジェローム・ロビンズの振付って、時代を超越してる。

「バレエ」という言葉のクラシックなイメージは、目から鱗で払拭された。バレエファンのみならず、私のような映画ファンも楽しめる作品です。

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