半兵衛さんの映画レビュー・感想・評価 - 8ページ目

半兵衛

半兵衛

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おこんじょうるり(1982年製作の映画)

4.6

生きているように動き回る人形を駆使して民話のような世界観を再現するアニメーションにうっとりとさせられ、当初はお互いを利用する打算的な関係だったイタコの能力が無くなった老婆と人の体を治療する浄瑠璃を歌え>>続きを読む

一条さゆり 濡れた欲情(1972年製作の映画)

4.0

警察にマークされ幾度となく検挙されてきたにも関わらずストリップ興業をおこなってきたためマスコミから反権力の象徴として取り上げられたストリッパー一条さゆりの引退興業の模様を描くモキュメンタリーと、一条さ>>続きを読む

アンソニーのハッピー・モーテル(1996年製作の映画)

3.5

ウェス・アンダーソンのプロデビュー作品ということで後年の作品に見られる構図へのこだわりなどといった特徴はほとんど無いが、それでも奇妙な奴らによる不思議な強盗からの奇妙な逃亡劇というオフビートなコメディ>>続きを読む

雨のヘッドライト(1972年製作の映画)

3.3

妻子のいる中年のトラック運転手とドライブインで働いていた女性の許されぬ愛を描いたメロドラマ風のポルノ映画、日活ロマンポルノがはじまったばかりで手探り状態で製作していた時期に作られた作品。

ジャン・ギ
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孤独な場所で(1950年製作の映画)

4.1

ミステリーのような序盤だったのにいつの間にか終始サイコパスなボギーと彼に惚れしてまい地獄を見るグレアムの異形な愛のドラマに変化して彼らの生々しくもどうしようもない悲しみに満ちたぶつかり合いに圧倒され、>>続きを読む

狂へる悪魔/狂える悪魔(1920年製作の映画)

3.1

サイレントの怪奇映画としても、『ジキル博士とハイド氏』の映像作品としてもなかなか。原作はミステリーのような展開だがこちらは薬品により二重人格となってしまった男が自分のもう一つの人格による暴走への苦悩に>>続きを読む

サクラより愛をのせて(1976年製作の映画)

3.0

岡本忠成×桂ざこば(製作当時は桂朝丸)という妙な組み合わせによるブラックでシニカルな大人のアニメ。電車の迷惑な客を制裁するというスカッと系の話かと思いきや、どんどん飛んでもない方向へと突っ走って最後は>>続きを読む

愚か者 傷だらけの天使(1998年製作の映画)

3.0

『傷だらけの天使』とタイトルには出ているがその要素は井上堯之の音楽だけで、実際は90年代に生きる若者のやりきれないうだうだした心情を描いたドラマ。主人公の青年演じる真木蔵人の男気はあるけれど不器用で馬>>続きを読む

愛人ジュリエット(1950年製作の映画)

3.5

邦題は艶のあるラブドラマみたいな内容を想像させるが、実際は藤子・F・不二雄のようなちょっと不思議なファンタジー映画。

牢屋で絶望の淵に突き落とされた主人公の青年が現実を忘れるため逃げ込んだ妄想世界は
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ゆけゆけ二度目の処女(1969年製作の映画)

3.5

マンションの屋上を舞台の大半に費やして映画を作ってしまうという一歩間違えればアートぶったあるいは貧乏臭い作品になりかねないところを、豊穣かつリリカルで瑞々しい映画に仕上げてしまうあたりこの頃の若松孝二>>続きを読む

都会の横顔(1953年製作の映画)

3.1

映像の吟遊詩人と呼ぶに相応しい清水宏監督だけに、舞台となる銀座の街並みを得意の移動撮影などを駆使して魅力的に撮してはいるのだけれど肝心の物語があっさりとしすぎていて出汁が効いていない味噌汁を食したよう>>続きを読む

チコタン ぼくのおよめさん(1971年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

あまりにも衝撃的な歌詞で有名な合唱曲『チコタン』を、岡本忠成監督がもっと踏み込んで映像化した一作。最初は子供がクレヨンで書いた絵のようなタッチが児童の歌う声とともに朴訥な雰囲気を醸し出し、そんな童心に>>続きを読む

火宅 能「求塚」より(1979年製作の映画)

4.5

冒頭での人間のような精密な動きをこなしている命がこもった人形から一気に映画に引き込まれ、二次元(絵)と三次元(人形やミニチュア)を巧みに駆使してこの世とあの世の境目のような幻想的な世界を表現する川本喜>>続きを読む

セールス・ガールの考現学/セールス・ガール(2021年製作の映画)

4.1

モンゴルというと未だに広大な大地にてテントで暮らす放牧の人のイメージがあるがそんなありきたりの舞台設定にせずに近代化した街並みを舞台にした点に意表をつかれたし、そうした都会などで暮らす主人公の生活をラ>>続きを読む

石川五右ヱ門の法事(1930年製作の映画)

-

1920年代後半から30年代中盤にかけてスラップスティックかつナンセンスなギャグ映画で一世を風靡した松竹時代の斎藤寅次郎監督(後に『男はつらいよ』の某キャラクターと名前が被るのが嫌で寅二郎に改名)、全>>続きを読む

ブラザー・フロム・アナザー・プラネット(1984年製作の映画)

4.3

地球に逃げてきた黒人宇宙人とニューヨークのハーレムに暮らす人たちとの交流劇。主人公である黒人の飄々とした雰囲気と浮世離れした顔立ちが宇宙人役によく似合っている(足だけで彼が異星人であることを示す簡潔的>>続きを読む

ひと夏の体験 青い珊瑚礁(1981年製作の映画)

2.5

何で池田敏春(監督)と荒井晴彦(脚本)という噛み合わせがよくなさそうなコンビにアイドルポルノ映画なんてやらせたんだろう、そんな変な作品。

池田敏春らしい映像美が随所に登場して映画のランクを上げるけれ
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宇能鴻一郎の濡れて打つ(1984年製作の映画)

3.5

映画監督のデビュー作品は作家の個性や特徴がよく表れているっていうけれど、金子修介監督のデビュー作品も例外ではなくて宇能鴻一郎っていう官能小説の作家の個性を生かしつつ漫画のパロディをあちこちに散りばめる>>続きを読む

美しき小さな浜辺(1948年製作の映画)

3.5

降り続く雨と灰色に染まった空、舞台となる侘しい田舎町、町人たちの冴えない会話、そこに訪れるジェラール・フィリップの美麗なのに寂しげな顔立ち…。いかにもフランス映画らしい文芸的な雰囲気が全編に立ちこめて>>続きを読む

スイング・ホテル(1942年製作の映画)

4.0

お話は舞台で活躍する二人の男とダンサー志望の一人の女による恋の駆け引きという他愛のないドラマだけれど、アステアの超絶的なダンスとビング・クロスビーによる美しい歌声が素晴らしすぎてこれだけでも見れて良か>>続きを読む

ひなぎく(1966年製作の映画)

3.5

少女たちがひたすら奇行を繰り返して周囲を翻弄するだけをポップに描いたお話なのに、そんな彼女たちが物悲しく見えるのは随所に登場する封建的な男性社会の重圧に耐えて生きる女性たちの辛さが滲んでいるから。その>>続きを読む

(2023年製作の映画)

3.6

「お前も、お前も、お前も、俺のために死ね」というボトムス予告編の台詞がぴったりな「一将功成りて万骨枯る」という戦国時代の地獄絵巻が絵空事ではなくそこで生きることの大変さが染々と伝わってくるのは、芸能界>>続きを読む

花形選手(1937年製作の映画)

3.0

学生の軍事訓練といういかにも当時の軍事状況に配慮しているような企画を、清水宏監督は行軍による動作やその周辺のドラマに限定することで自分の得意な歩く映像詩に仕立て上げ企画意図をねじ伏せているのが今見ると>>続きを読む

ザ・マジックアワー(2008年製作の映画)

2.0

三谷幸喜の映画監督作品って自分がどういう映画が好きかを熱弁しまくっているマニアの話を聞いているような作風で、他の人がどういう好みがあるのかを配慮せずとにかく自分の映画愛を押し付けているので物語よりもい>>続きを読む

黙秘(1995年製作の映画)

4.0

スティーヴン・キングとキャシー・ベイツ、『ミザリー』で幸せな出会いを果たした二人だからこそ成し得た傑作。閉鎖的な田舎町での些細な事件を通して、主人公たち女性を差別してきた男性社会の欺瞞をあぶり出してい>>続きを読む

アイダよ、何処へ?(2020年製作の映画)

3.8

昨日まで普通に暮らしていた市民がある人種だという理由で突然虐殺される恐怖が凄まじい緊張感をともなって描かれ、その容赦ない作風は正直鑑賞していてしんどかったしくたくたになったけれど人間が社会の変動に飲み>>続きを読む

虞美人草(1941年製作の映画)

3.6

夏目漱石特有の言い回しや舞台となる明治の東京が見事に再現されていてさすが若い頃は文学青年だったという中川信夫監督の気合いの入りようが伝わってくる、そして中川監督による映像テクニックが繊細に夏目ワールド>>続きを読む

拳銃0号(1959年製作の映画)

2.4

旅行のため日本を訪れた外国人が所持していた拳銃がふとしたことをきっかけに様々な人物の手に渡ることに…と解説文を読むとめちゃくちゃ面白そうな映画に思えるけれど、実際はそれぞれのエピソードは冗長だしいずれ>>続きを読む

機動警察パトレイバー2 the Movie(1993年製作の映画)

3.3

絵の端正な美しさやカメラ越しを意識したような映像は良いのだけれど、押井守の「戦争論」がこれでもかと全編に張り巡らせていて少し辟易する。

ロボットアニメなのに肝心のロボットが活躍しないというのも凄いけ
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夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版(1979年製作の映画)

3.0

小さい頃に特撮の本に掲載されていたのを読んで以来気になっていた作品だけれど、いざ見るとファンタジーというには変な要素が多過ぎて今一つ乗れず。そもそも篠田正浩監督に泉鏡花をやらせようという発想もおかしい>>続きを読む

大日向村(1940年製作の映画)

-

映画が単なる娯楽ではなく、時には政治利用され民衆に悲劇をもたらす一因となることを証明する貴重な記録。苦しい国内での農業を捨て夢と希望に溢れる満州への開拓に向かう主人公たちの姿は真摯に描かれているけれど>>続きを読む

懺悔(1984年製作の映画)

4.0

決して見ていて楽しい映画ではないし二時間半という長い尺もしんどかったけれど、権力の横暴やその犠牲にされた市民たちの苦痛を生々しく突きつける作風は胸をつかれたしそれがエンターテイメントになることはなく彼>>続きを読む

私の中のもうひとりの私(1989年製作の映画)

4.0

ウディ・アレンが敬愛するベルイマンにオマージュを捧げつつ、単なる模倣ではなく監督ならではの作風と融合させて独特な味わいを持つ作品へと昇華させているのがさすが。そしてそんな主人公をアレン作品の当時のミュ>>続きを読む

リオの男(1964年製作の映画)

3.0

『インディ・ジョーンズ』シリーズやジャッキー・チェンの作品など多数の娯楽作品に影響を与えた作品だということで期待して鑑賞したが、60年代らしい緩い造りの娯楽作品以上のものではなかったな。

二時間とい
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死の十字路(1956年製作の映画)

3.9

江戸川乱歩原作とあるけれど、不倫した亭主が誤って殺した妻を不倫相手と共に隠すというメインストーリーや猟奇性皆無なドラマなど全然乱歩要素の無いのが合点がいかないミステリー映画。でも結構練り込まれた脚本や>>続きを読む

大平原(1939年製作の映画)

3.5

アメリカ大陸に大規模な鉄道を建設しようとする人間たちのドラマだけれど、それにしては建設をめぐるドラマよりも戦友だった保安官とならず者、鉄道に勤める女性の三角関係がメインになっていてどうでもいいメロドラ>>続きを読む