rayconteさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

暗数殺人(2018年製作の映画)

5.0

2020年は「パラサイト」のヒットに伴ってか、日本未公開だった韓国映画がたくさんなだれ込んで来た印象がある。
「暗数殺人」も、製作は2018年ながら日本では今年公開されたようだ。
しかし、この作品なら
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悪の偶像(2017年製作の映画)

5.0

韓国映画は欧米の技法と独自の仄暗い文学性によって名作を生み出し続け、アカデミー外国語長編映画賞をポンジュノ監督「パラサイト」が受賞したことからも、今もなお足踏みすることなく進化を続けている。
本作「悪
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WALKING MAN(2019年製作の映画)

1.0

エミネム主演の8mile以後、ラッパーはその「呪い」に取り憑かれている。
ラップで貧乏から成り上がり系の映画はいくつも作られ、20年経ってもマーシャルマザーズの幻影を追いかけているのはちょっとどうだろ
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デスマッチ 檻の中の拳闘(2018年製作の映画)

5.0

「デスマッチ」は邦題だ。
このタイトルと日本版ポスターを見ると、トム・ハーディ主演の「ウォーリアー」みたいな胸アツ格闘技映画だったり、ジャンクロードヴァンダムあたりのはちゃめちゃアクションを想像してし
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マティアス&マキシム(2019年製作の映画)

5.0

熱く、苦しく、痛く、そして乾いている。
現実の息苦しさと幻想の幸福の両方が、その境目なく共存している。
劇のために作られた恋愛映画ではなく、より人生そのものに近い情動と冷淡のインプロヴィゼーションだ。
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エノーラ・ホームズの事件簿(2020年製作の映画)

5.0

ホームズ映画の新機軸となりそうな女性主人公、エノーラホームズの活躍(ジタバタ?)を描く超ポップな一作。

のっけから第四の壁をぶち破るミリーボビーブラウンが、行く先々で七変化を遂げ、走って、投げて、キ
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劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(2020年製作の映画)

5.0

 どんな作品でも、人間が作っている。
 僕らは日々生活している。仕事や学業をし、他人と付き合い、食べて眠る。
 その中で多くの人が、自分自身の平凡で平坦な人生に不安や葛藤を覚えたり、あるいは空虚になっ
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TENET テネット(2020年製作の映画)

5.0

「TENET」とは「主義」「教義」を意味する言葉であり、時間というものが過去から未来へ流れるという認識は人類共通の「教義」と言えるだろう。
 例外的に仏教の「因果」の考えにおいては、時間は未来から過去
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花と雨(2019年製作の映画)

5.0

〝バタンと閉めたドアの向こう側 かけなかった優しさの言葉
最後なるなら…そればっか 最後にさよならは言えないさ〟

 誰かにとって重要であることが、誰しもにとっても重要であるとは限らない。それと同じよ
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パラダイス・ネクスト(2019年製作の映画)

5.0

予告編を観た時、90年代ウォンカーウァイ映画のような雰囲気に惹かれた。
さすがにそっくりそのまま真似しているわけではないだろうと思って観てみると、オープニングのタイトルバックやカリビアン音楽、それらど
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ストレンジ・アフェア(2019年製作の映画)

5.0

これは、ものすごい作品だ。
既存の劇構築術を一度解体して再構築したかのような奇妙な構造は、映画版ポストモダンとでも言うべきだろうか。
既存の映画的基礎構造とは全く異なる、一見ちぐはぐにすら思える繋ぎ合
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カット/オフ(2018年製作の映画)

5.0

 2018年ドイツ製作の傑作ミステリー映画。
 とにかくおもしれ〜!!クオリティに見合った知名度がないように感じるけれど、ここ10年のミステリー映画でベスト3くらいに入る大傑作ではないだろうか。
 な
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負け犬の美学(2017年製作の映画)

5.0

すんげーーいい映画。
まずこの映画、スポ根ものという観念を捨てて見てほしい。
才能も若さも失った人間が、それでも生きていく姿を描いた秀逸で普遍的な人間ドラマなのだから。

最初に言いたいことは、このバ
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ナイチンゲール(2019年製作の映画)

5.0

ジェニファーケント監督による19世紀オーストラリア・タスマニアを舞台とした本作は壮絶な復讐劇であり、バディムービーであり、人間の通じ合う瞬間を描く傑作。

イギリス人兵士の残虐性が容赦なく描かれるが、
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守護教師(2018年製作の映画)

5.0

みんな大好きマドンソクの強烈ボディブローが(物理的に)炸裂する快作。
リーアムニーソンの「96時間」シリーズが好きな方は絶対気にいる。

単なるアクション映画ではなく、地方都市に漂う閉塞感をしつこくな
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9人の翻訳家 囚われたベストセラー(2019年製作の映画)

5.0

作家ダンブラウンの世界的ヒット作、ロバートラングドンシリーズの4作目「インフェルノ」。
その作品の翻訳時、数人の翻訳家が出版社に監禁状態で作業させられたという事実にインスパイアを受け、本作「9人の翻訳
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the EYE 【アイ】(2002年製作の映画)

5.0

僕は幽霊や呪いの類いを基本的に信じていない。
これまで出会ってきた人の中に霊感を持っていると自称する人も何人かいたが、特別な才能も実力もない人間が自己承認欲求を満たすために作り出したファンタジーのよう
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マザーレス・ブルックリン(2019年製作の映画)

5.0

エドワードノートンの長編監督2作目。

原作小説は90年代を舞台としているが、本作は舞台を50年代の暗黒期ニューヨークに置き換えている。
誰もが知るブルックリンブリッジ建設の裏に隠された利権の闇と、そ
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ナンシー(2018年製作の映画)

5.0

奇妙で、想像力を必要とする作品。
けど紛れもなく人間ドラマとして秀逸な映画だ。

主人公ナンシーは他人と繋がるために嘘をつく女性。
観る者が最も混乱する点は、彼女が言っていることは必ずしも全部が嘘では
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WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

5.0

煮えたぎる感情が針のように鋭く、波のようにたおやかに心臓を突き刺す。
繊細でエゴに満ち、それでいて痛々しいほど心を揺さぶられる特別な一本だった。

本作には煌めきや不安定さ、独善的な愛や憎しみなど青春
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ハンズ・オブ・ストーン(2016年製作の映画)

5.0

まず始めに言っておくと、僕はボクシングが大好きだ。
正直言って、映画の出来に関わらずボクシングが題材というだけでかなりプラスバイアスがかかった状態で観てしまう。

パナマ出身の伝説的ボクサー、ロベルト
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ジョン・F・ドノヴァンの死と生(2018年製作の映画)

5.0

天才、クザヴィエドラン監督のイギリス・カナダ合作映画。

本作は、これまで内省的で極めて狭い範囲の問題を扱って来たドラン作品とは一転、尺度を広げた新しい作品となっている。

物語は2006年に死去した
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ルース・エドガー(2019年製作の映画)

5.0

いい意味で期待を大きく裏切る映画だ。

「善人か?悪人か?」というキャッチコピー(日本版独自のものなのか?)は、良く言うとミスリード、有り体に言うなら映画の本質を見誤ったセンスゼロの文言だ。
それほど
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初恋(2020年製作の映画)

5.0

観たらわかる、ヤッバイやつ!!
暴力、哀愁、欲望が音速で交差するウルトラG級の超絶娯楽作!
登場人物全員バカ!

主役からチョイ役まで捨てキャラなしで、どこを噛んでもいい味出てる俳優陣。
ヤクザ、チャ
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アンカット・ダイヤモンド(2019年製作の映画)

5.0

もう観たくない。二度と観たくない。「アンチクライスト」級にマジでもう観たくない。
しかし困ったことに、これは傑作だ。

ベラベラうるせーアメリカ映画は数あれど、本作はその新たな頂点じゃないだろうか。
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きみと、波にのれたら(2019年製作の映画)

5.0

湯浅政明は世界で最も過小評価されている映画監督のひとりだ。

ジブリ、ディズニー、ピクサー、過去にも水の表現に重点を置いた作品は多くあったが、この作品はそのどれとも違う全く新しい奇想天外な水表現を作り
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ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(2019年製作の映画)

5.0

キャプテンアメリカの功績で忘れてるかもしれないけど、クリスエヴァンスは元々こういう最低野郎(の役が似合う)男なんですよ!

「ねじれた家」ライクな設定、クリスティマナーに忠実なプロット、細部まで行き届
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ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)

5.0

可笑しくて可愛くて、悲しくて優しい。
タイカ・ワイティティのユーモアと知性と愛が炸裂する、快作だ。

WW2下のドイツ、ナチスから隠れるユダヤ人の少女。「アンネの日記」も、ワイティティの手にかかるとこ
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リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)

5.0

古来から不死とはあらゆる探求がなされてきたが、そのひとつの答えを体現する者がクリント・イーストウッドだ。
慄然とした巨人でありながら、地上の人々の目線にも優しく寄り添う想像力の化身は、まだまだ死にそう
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象は静かに座っている(2018年製作の映画)

5.0

これはフー・ボーによる、映画の手法を用いた彼の見る世界の記録。
そんな印象だった。

四人の群像劇だが、誰一人として芯のあるやつがいない。
四人の違いは、似たり寄ったりの自堕落で無軌道な人生のどの地点
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フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)

5.0

その153分は風よりも速く、340キロで駆け抜けるようにあっという間だった。

白熱のレースシーンは極めてスリルに溢れて、いつの時代にも起こる資本と創造力の対立構造が普遍的なドラマを与える。
純粋な娯
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パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)

5.0

僕は宗教を持たないが、もし何人かを神様にしなければならないと言われたら、ポン・ジュノは間違いなくそのひとりだとは、この作品を観て感じたことだ。

もう説明すら野暮なほどの圧倒的な娯楽力。
予想を裏切り
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ジュリアン(2017年製作の映画)

5.0

フランス版シャイニング。
ただし狂気は日常に存在する。

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)

5.0

優しくも非情で、美しくも過酷な映画だ。

人種、宗教、言語、貧富の差。マレーシアの多様化社会の中で、若者たちが育もうとする純粋な情や愛は、社会という背景が偏見や偏執を生み、歪んだものにならざるをえない
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