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the EYE 【アイ】のrayconteのレビュー・感想・評価

the EYE 【アイ】(2002年製作の映画)
5.0
僕は幽霊や呪いの類いを基本的に信じていない。
これまで出会ってきた人の中に霊感を持っていると自称する人も何人かいたが、特別な才能も実力もない人間が自己承認欲求を満たすために作り出したファンタジーのように思えていたからだ。
決して斜に見ているわけではないが、悪霊、精霊、悪魔、神など、事物として立証されないものの実存を信じるというのは僕には難しい。
しかし、それが本当に見えるという人の意思は存在すると思う。つまり一種の宗教信仰として。

映画というのはすべからく、自分では見ることのできない世界を覗かせてくれるファンタジーであり、本作「THE EYE」は正にそのど真ん中を突いてくれた作品だ。

全盲の主人公マンは、角膜移植を受けて光を手に入れる。だが、やがてその目は存在
しないはずのナニカを映しだす。
あらすじだけで強い興味を引かれ、ホラー映画のプロットとしては100点と言えるツカミだ。

だが得てして、コンセプトの強いホラー映画は出オチで終わる事がかなりの確率で起きる。
ツカミはいいが、中盤からなんだかバタバタし始めて最終的には殺しあって終わり。
そんな例をいくつも観てきたが、本作に全くその心配はない。

マンの見える世界についての恐怖感に慣れてきた中盤あたりから、物語は意外な切り返しを図り、切なさと不穏さが尾を引いたまま幕を閉じる。
これは、日本ホラーの傑作「リング」の構造とよく似ている。
全編通して見応えがあり、いつのまにかポップコーンを食べる手は止まっているはずだ。

ホラーというジャンルは移ろいが激しく、時代とともに様々なアップデートが繰り返されてきたが、本作は今観ても色褪せることない名作だ。
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