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パラダイス・ネクストのrayconteのレビュー・感想・評価

パラダイス・ネクスト(2019年製作の映画)
5.0
予告編を観た時、90年代ウォンカーウァイ映画のような雰囲気に惹かれた。
さすがにそっくりそのまま真似しているわけではないだろうと思って観てみると、オープニングのタイトルバックやカリビアン音楽、それらどこをとってもウォンカーウァイの「ブエノスアイレス」にそっくりだ。
オマージュはいいとしても、やはり新しい映画であるからには何か驚きがほしい。
でも、この映画は脚本が致命的に悪い。
悪いというより、脚本がほぼ「ない」といってもいい。
これは単に台詞が少ないという意味じゃない。
ウォンカーウァイといえば登場人物の微妙な心理を台詞ではない部分で描く天才だが、この作品にそういった繊細さはない。
ただ意味ありげな暗い表情を浮かべながら男が外国を彷徨っているだけで、そこには何の深みもカルマもない。
たとえば、プラダのショッピングバッグを開けたら中身はH&Mのワンピースだった時のような失望感がある。
こういったあまりにひどい脚本の映画を観るたび思うのだが(特に邦画はクソ多い)、誰もチェックしていないのだろうか?
日本の映画監督は「先生」だから誰も文句が言えないのか?
もしそうなら、邦画はもう終わりだと言っていい(ごく一部の優秀なクリエーターを除いて)。
ブラッシュアップを怠る芸術は衰退していくだけだ。

宣伝コピーには「孤独な男たちの運命が交わるノワール」と打ってあるのだが、全然ノワールでもなんでもないし、なんだったらオッサン二人があちこち歩いて飲み食いしてるだけだ。
でも劇中に出てくる台湾の風景はとても魅力的だ。いわゆる観光スポットではなく、もう少し土着的な土地を映しているから。
日本人からすれば、異国情緒に溢れ、ワンダラストをかき立てられる光景である。
映画ではなく、旅行エッセイとしてなら100点だと思う。
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