ウシュアイア

ゴブリンスレイヤーのウシュアイアのレビュー・感想・評価

ゴブリンスレイヤー(2018年製作のアニメ)
3.6
ギルドでゴブリン討伐のクエストのみを請け負い続ける仮面の戦士のお話。

この作品は一言でいうと、『灰と幻想のグリムガル』並みに幻想世界におけるリアリズムを追求した作品。

欧風ハイファンタジーの世界でゴブリンといえば、スライムと並ぶ雑魚モンスターの代表格だが、無数といたであろう駆け出し冒険者が倒しても倒しても沸いて出てくる。ゴブリンの生態を考察してみると、現実的にはなかなか厄介な存在であることが見えてくる。子どもくらいの体格でも集団で刃物をもって集団で襲い掛かってきたら大の大人だってひとたまりもないことがよくわかる。となると、現実世界でも害獣駆除の仕事も対象によってはスズメバチとかクマとか専門家いるように、ゴブリンといえども討伐するにあたっては、ゴブリンの生態を知り尽し、最適な装備をもったその道のプロ(ゴブリンスレイヤー)がいてもおかしくないというところから、ファンタジーにおける玄人、プロの仕事の話となっている。

この作品のリアリズムはプロフェッショナルな仕事ぶりのみならず、前提となるゴブリンの生態・習性の設定に始まり、冒険者のキャリアパス(ステップアップから引退後)まで言及されており、非常によく作りこまれている。

そして話の展開も、ありふれた武器で無双ではあるものの、何せ数が多かったり、地形や罠などのディスアドバンテージがあったり、またゴブリンの上位種や黒幕のボスキャラの存在により、ゴブリン討伐と言えども苦戦を強いられる展開になる。(この辺は駆け出しの冒険者の話である『灰と幻想のグリムガル』でも描かれている。)そして、暗い過去をもちコミュ障気味の主人公が、仲間との協力により討伐に成功して心を開いていくというのもベタではあるが、話に奥行きを出している。

ただし、人間心理のリアリティの追求という方向性により、他の作品よりもエログロが取り入れられているので、耐性がないときついかもしれない。

あと本作で特徴的なのが、登場人物に固有名がない。主人公は「ゴブリンスレイヤーさん」だったり「オルクボルグ」、「かみきり丸」、「小鬼殺し殿」などと人によって呼ばれ方が違う。名前がない世界という点でも興味深い。

また、主人公の素顔は一応イケメン設定だが視聴者に示されておらず、他の登場人物にも滅多に素顔をさらさないというギミックにも引きつけられるものがある。
ウシュアイア

ウシュアイア