ウシュアイア

HUNTER×HUNTERのウシュアイアのレビュー・感想・評価

HUNTER×HUNTER(2011年製作のアニメ)
4.8
秘宝、秘境、珍獣など「未知」への挑戦に人生をかける「ハンター」である生き別れの父ジンを追ってハンターとなった少年ゴンと仲間たちの物語。

言わずと知れるジャンプ連載の大人気作品の2回目のアニメ化作品。

原作の度重なる休載により原作コミックスもGI編あたりで止まっており、リアタイ視聴も同じくらいまでしか観ていなかったが、この度GYAOで1日4話ペースで無料配信され、普通ならばかなりしんどいペースだが、ちょうどコロナ療養で家から出れなかった時期もあり、全148話完走。

この作品は週刊少年ジャンプの基本フォーマットの上に作られた作品であることには間違いないのだが、バトルは常にゴン達主人公よりも圧倒的に能力差がある相手と頭脳戦、心理戦が繰り広げられ、「努力・友情・勝利」に加え「機転」が加わっているところが面白い。

また、改めて観るとヨークシンシティ編まではある意味ジャンプの王道的展開だが、GI編以降は2010年代のヒット作品に影響を与え、インスパイアした着想やストーリーが随所に見られる。多くのプレイヤーがゲームの世界に転移してゲームクリアを競いあい、そこにプレイヤー同士の心理戦になっていくGI(グリードアイランド)編は『ソードアートオンライン』や『ログ・ホライズン』に通じるものがあるし、人間を捕食して進化し、脅威をもたらすキメラ=アント編は『進撃の巨人』『約束のネバーランド』『鬼滅の刃』を思い起こさせる。

ドラゴンボールのバトル冒険譚から、Massively Multiplayer Online(大規模多人数オンライン)ゲーム、プレデター(捕食者)との戦いと共存を描いたダークファンタジーとまさに『HUNTER×HUNTER』は週刊少年ジャンプそのものといっていい作品だということを改めて知ることになった。

近年では当たり前だがキャラの設定も細かくなってしまい、キメラアント編では本筋のテンポが遅かったり、映像とセリフのみでの追いつかず、ナレーションだらけなってしまった回も少なからずあった。仕方がないといえば仕方がないのだが、そうした欠点を補って余りある面白さがあるのは間違いない。週1ペースでは緩慢だが、1日1話以上のペースで見る分には気にならない。

MAD HOUSEの迫力あるアニメーションでは申し分なし。

声優のキャスティングもベテランを集め、気が付けばルパン三世のルパン以外がそろっていたりと、かなり豪華。主要キャストは潘めぐみさん、伊瀬茉莉也さん、沢城みゆきさん、藤原啓治さん、浪川大輔さんと間違いがない。個人的MVPはビスケ役の横山智佐さん、シャウアプフ役の羽多野渉さん。

あとは、劇伴も素晴らしい。ラテンなヒソカのテーマ、プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』の『騎士の踊り(モンタギュー家とキャピュレット家)』を思わせるゾルディック家のテーマ、そしてバッハのシャコンヌやヴィヴァルディのバイオリン協奏曲のようなシャウアプフのテーマ、と印象に残る曲はが多い。

差し当たってゴン自身の当初の目的は果たし、綺麗なところでアニメは終わった。引き分けとなった幻影旅団との対決など未回収の伏線もあるが、ゴンは正義の味方という訳ではないし、旅団の話はクラピカの復讐劇なので、ゴンが主人公である限り、本編では未回収でもいいのかもしれない。それでも続きが気になるので、原作を読もうかな。
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