真田ピロシキ

こんにちは アン〜Before Green Gables〜の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.7
悪いアニメじゃないんだ。2009年に置いて女の子が主人公なのにキモオタ向け萌え萌え美少女に毒されていない。それだけでも一定の価値はある。だがこれは赤毛のアンの前日譚という大きすぎる重荷を背負っていて、それを克服出来ているとは思えない。公式二次創作。分かるよ。私自身が今二次創作小説書いてる身だからね。都合の良い話を考えてしまう。でも1世紀以上語り継がれたこれ程の作品でそれじゃダメなの。

とにかく登場人物の都合が良い。最初にアンを気に入る金貸しのおばさんからしてそう。アンはグリーンゲイブルズに行くまで不幸な人生を送っていたはず。なのにトーマス一家もハモンドさんも孤児院ですら、アンは人との縁に恵まれている。アヴァンリーでアンは過去の家について信じたい気持ちを交えながら優しくする気はあったと思うと言ってたはず。それがこれだとカスバート兄妹の尊さが薄れる。友達も普通にいるからダイアナの特別さも半減。これはアンの不幸が嫌な人が書いた話でしかない。徹底的にアンには靡かなかったジョーシー・パイがどれほどユニークなキャラクターだったのかを思い知る。

それと話運びも安直で、バートおじさんが突然アンを家族と言った時には「ああ、これから死ぬんだね」と思ったら案の定。ケンドリックさんも優しいので予想通り。ダメやろ、こんな予定調和のキャラクター。リンドさんなんか親しいがアンを全肯定はしないそういうところが面白い人だったんよ。先生も素直に引き取ればいいだろうに変な理由でやめさせるのが、脚本の都合でしかキャラクターが動いていない。皆が台本に従った役者でしかない。そこに生の人間感はないよ。

それでも悪くはないです。美少女アニメに毒された今ではこの上品さは貴重。先生のふっくらした顔立ちは素晴らしいね。声優はインボイスで闘う岡本麻弥さん。確固とした意志を持った教育者というキャラクターに息を吹き込んでいた。もう一度言う。悪いアニメじゃない。