ウシュアイア

ロミオの青い空のウシュアイアのレビュー・感想・評価

ロミオの青い空(1995年製作のアニメ)
4.0
19世紀後半、イタリアとの国境近くのスイスの貧しい農村に暮らす少年ロミオは病気の父の治療費を捻出するため、自ら人買に買われ、ミラノの煙突掃除人となることになる。ミラノで出会った仲間たちと「黒い兄弟」を結成し、過酷な労働環境やストリートチルドレン”狼団”に立ち向かう、時代を超えて困難に立ち向かう子供たちに勇気を与えてくれるお話。


世界名作劇場というと、世代的に「私のあしながおじさん」とか「トラップ一家物語」とか女性が主人公の話が多かったり、ディズニーのイメージと違って子ども心ながらに困惑してしまった「ピーターパンの冒険」と微妙な作品が多かった。あとはバラエティー番組などで何度もネタバレ名シーンを見せられ続けた「フランダースの犬」や、何度も再放送された「小公女セーラ」のイメージから苦労人の主人公が困難を乗り越える話というイメージだった。

ひょんなことからネットニュースで本作が名作劇場随一の名作ということで、観始めた。

ざっくりとしたストーリーラインはやっぱり「おしん」のような苦労人の子ども話だった。結局こういう作品が出てきたのは、自分たちの親世代(今のじいさんばあさん世代)が戦後の復興期を生き、子どもたちに自分たち(より上の世代)の苦労がどんなもんだったのかを伝えるという役割もあったんじゃないかと思う。

それだけだったらもうおなか一杯なのだが、虐げられた少年たちが「黒い兄弟」を結成し大人や地元のストリートチルドレンに対抗していくのがアツいのだ。そこに『東京リベンジャーズ』に通じるものがあり、男の子というのはいつの時代も仲間とのアツい絆を求めていることをまざまざと見せつけられた。

折笠愛さんの熱演にも注目したい。折笠愛さんが演じていなかったらここまで完成度が上がっていなったと思う。

以上、観ていない人向け。

以下、ネタバレあり。

本作は
1話~7話 ロミオ立志編(プロローグ)
8話~14話 煙突掃除奴隷編
15話~18話 狼団抗争編
19話~23話 アンジェレッタ編
24話~30話 アルフレド編
31話~最終話 エピローグ
と分けられるだろう。

煙突掃除奴隷編とアンジェレッタ編は世界名作劇場のコンセプトを踏襲しており、気難しい人が実はいい人だった的な展開はベタ。一方で、狼団抗争編とアルフレッド編が少年漫画的でストライクゾーンを広げていた気がする。

いろいろ物議をかもしたところいえば、アンゼルモとの和解を不成立にしたり、死神ルイニの罪が不問になっていたり、といったところがあったが、完全な勧善懲悪になるとやっぱり気持ち悪いからあえてもやっとする形にしたように思える。

ただ、あれだけ尺をとって愛を育んだアンジェレッタとはそれっきりにして、終盤に現れたアルフレドのブラコン妹ビアンカと結ばれてしまったことをあっさり見せてしまったのは無粋だ。そこはあえて想像に任せた方がいい。
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