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さらざんまいのGTのレビュー・感想・評価

さらざんまい(2019年製作のアニメ)
5.0
 「ウテナ」「ピングドラム」「ユリ熊」と来てこれ。多分、一番知名度が少ないアニメ。俺自身もイクニの事を調べて初めて知った。
 絵柄がなんとなく子供アニメっぽい雰囲気で、見る前は自分に合うか些か不安だったのだが、蓋を開けてみれば最初から最後まで完全なイクニワールドが展開されており、「ブレねえなぁ」と思った次第だ。
 一話目からして、その演出のエキセントリックさには度肝を抜かれる。「カパゾンビと呼ばれる敵との戦闘でいきなり歌い出す」「イケメン警察官コンビが踊りながら歌う」「カパゾンビの倒し方が尻の穴から尻子玉を抜く」といった具合に、そのシュールさ、奇抜さはイクニ随一と言っても過言では無い。
 明らかに笑わせる事を意図した演出群とは裏腹に、ストーリーは中々にシリアスだったりする。過去の過ちにより弟を怪我させ後遺症を負わせてしまった一稀、暴力団の兄のために命をかける悠、一稀に思いを寄せる燕太。彼らは時折ぶつかり合い、問題を引き起こす。男同士の友情ドラマとしてかなり良質であり、特に一稀と春河のエピソードはなかなかに泣ける。「ピングドラム」「ユリ熊」と同じく時系列を遡らせる演出が多用されているものの、物語としての複雑さは上二つほどではない。とは言っても、最終回ではやっぱりイクニ節が炸裂。しっかりとこちらを置いてけぼりにしてくれる。
 余談になるが、前作「ユリ熊嵐」はその名の通り百合、つまり女性同性愛がテーマだったが、今回は明言こそされていないものの明らかに男性同性愛がテーマの一つになっている。「ピングドラム」「ウテナ」でも同性愛要素があったことから、幾原監督生涯のテーマとして同性愛があるのだろうと思う。
 
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