ウシュアイア

おっさんずラブのウシュアイアのレビュー・感想・評価

おっさんずラブ(2018年製作のドラマ)
4.0
天空不動産の営業部員のはるたんこと春田創一は上司の部長・黒澤武蔵のPCを操作した際に黒澤が自分を隠し撮りした画像を見つけたことを機に、黒澤からの熱烈なアプローチが始まり、同時に春田は実家で家事を親任せに自堕落な生活を送っていたことに愛想をつかして親が出て行ったところに、後輩の牧凌太とルームシェアすることになるが、春田は同性愛者の牧に惚れられてしまい、春田の幼馴染の荒井ちず、黒澤の妻・蝶子などを巻き込んで、黒澤と牧とで春田をめぐって壮絶な三角関係を繰り広げる、というコメディ。


言わずと知れた話題作だが、今さらながら「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(チェリまほ)の流れで観た。「チェリまほ」は割とまじめなラブストーリーだったが、こちらはなんだかんだ言ってがっつりコメディ。
ラブコメディの鉄板プロットである、思いもよらぬ相手から好意をもたれて制御不能に陥る、ということをとことん突き詰めたのが本作だろう。そして、ロリの巨乳好きのおっさんに片足を突っ込んだ30代の独身男の春田がなぜ男と恋愛をすることになるのかというのも、春田の優しさというよりもむしろ面倒くさがり屋の側面からの優柔不断な態度により、春田の与り知らぬ形でどんどん話が進んでいくという展開も、ラブコメディの定番と言えば定番に思える。本作からLGBTQだの、愛や家族の多様性などを見出す向きもあるが、それはおまけのようなものだ。性的少数者の領域をエンタメとして消費するのはけしからんという言説もあるが、コメディの部分はあくまでも普遍的な鉄板プロットに過ぎないので、あまり関係ないように思える。

この作品の面白さは吉田鋼太郎の振り切れた演技も然ることながら、なんと言っても春田というお人好しだが優柔不断な愛されるキャラクターが脚本、演出、主演の田中圭の演技によって生み出されたことだと思う。大塚寧々演じる黒澤の妻蝶子、伊藤修子演じる瀬川舞香のキャラクターもストーリーの中でうまく機能しており、なかなか緻密な脚本と芝居だった。それだけでも十分楽しめる。


同性愛とか性的少数者云々が問沙汰されるが、それ以上に実は大きな問題提起もあったように思える。

春田は結婚適齢期ではあるものの、婚活をしたり、自分磨きをしたりするわけではなく、後先考えず自分にとって楽な方、楽な方を選んでいった結果、同性の牧との恋愛にたどりついてしまっている。男女の恋愛を経て結婚に至るには、価値観の違いの相違の克服、家庭への責任感が求められ、春田はそれから逃げていると見ることもできる。春田のような生き方はけしからんと言われるんだろうが、同時に春田の生き方の裏には男の生きづらさのようなものが透けて見えてくる。性や生殖のことを除くと、男女よりも気兼ねなく付き合える同性で支えあって生活するのは楽だと思う。
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