ウシュアイア

カラマーゾフの兄弟のウシュアイアのレビュー・感想・評価

カラマーゾフの兄弟(2013年製作のドラマ)
4.0
ロシアの文豪ドストエフスキーの同名の長編小説の翻案ドラマ。

とある海辺の地方都市・烏目町の資産家で一帯を牛耳る黒澤家の傍若無人な当主・黒澤文蔵(吉田鋼太郎)が何者かに殺され、文蔵の三人の息子、遊び人の長兄・満(斎藤工)、弁護士の次兄・勲(市原隼人)、精神科医を志望する医学生の末弟・涼(林遣都)文蔵から激しく虐げられていたことから、重要参考人として事件の捜査を取り仕切る刑事(滝藤賢一)の取り調べを受け、三人の生い立ちから文蔵への憎しみへの露わになり、事件の真相が明らかになっていく。


放送当時、リアルタイムで全部観たような観ていなかったような・・・といったところで、いつかちゃんと最初から見返してみたかった作品。吉田鋼太郎と林遣都が親子役で出演している作品ということで、『おっさんずラブ』がきっかけで思い出した。

原作は未読で、原作では涼にあたる末弟は医学生ではなく修道士ということもあり、宗教色の強い作品らしいが、本作では舞台を現代日本に移しており、宗教の代わりに現代日本の道徳規範やヒューマニズムに基づいて登場人物たちの対話が繰り広げられる。三人がどのようにして傍若無人な父親、そして父親への憎悪と向き合い、正気を保ってきたのか、というところがポイントだと思う。

物語は非常に狭い舞台の中で会話劇が主体に展開され。乙女心をもつダンディーな部長・黒澤武蔵ではなく傍若無人な父親黒澤文蔵を演じた吉田鋼太郎の迫力ある演技に圧倒される。吉田鋼太郎はそれまで演劇を中心で活動してきたこともあり、本作は芝居を映像しか観ないような人から注目を集めるようになった作品でもある。

もちろん三兄弟を演じた斎藤工、市原隼人、林遣都に、刑事役の滝藤賢一と実力者ぞろいに加え、ほぼ無名に近かった高梨臨や松下洸平も出演しており、俳優の演技を存分に堪能できる作品になっている。
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