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D.P. -脱走兵追跡官-のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

D.P. -脱走兵追跡官-(2021年製作のドラマ)
4.3
国民の義務として1年半ほどの兵役がある韓国。
その軍隊の中で渦巻く闇を、脱走兵を通して描くシリアスな社会派ドラマです。
1話が50分程度で全6話だし、おもしろくて一気に見てしまいました。

入隊して間もなく、主人公ジュノは成り行きからD.P(脱走兵の追跡官)に任命され、先輩の相棒とともに脱走兵の連れ戻しに奮闘します。

兵士はなぜ脱走したのか。
その背景には、軍隊での苛烈ないじめや貧困などの根深い問題があり、同時に、軍隊が非人間的で階級がものを言う徹底した縦社会の組織であるために、おかしなことがあっても誰も声を上げられず、上がったとしても上層部に握りつぶされます。
それで組織が腐敗し、いじめも蔓延り、しかもその問題を誰もが知りながら改善できず傍観しているということを描いています。

このドラマ見たら、これから兵役に就く若者やその家族はめちゃくちゃ不安と恐怖を感じるのではと思います。
韓国ではアイドルや俳優などの売れっ子でも、貴重な1年半〜2年間を兵役に費やさないといけません。
「国民としての義務を果たしてきます」という感じの定型文的な当たり障りのないコメントを残して軍に入って行くのを聞きますが、内心はどうなのかなといつも思います。

軍隊に強制的に行かされる徴兵制についての抵抗感や反発を感じる人もきっとたくさんいると思いますが、軍隊、マジで行きたくないわって有名人で言う人いるんでしょうかね?

ドラマのラストで、ジュノが反対向いて歩いてくところとか、フルメタルジャケットを思い出させる最後の強烈な終わり方とか、軍隊や徴兵制、さらには社会のあり方について一石を投じていて、こういう作品をきっかけに、徴兵制や軍組織の問題について考えられたら良いなと思いました。

家庭に恵まれず心に傷を抱え、だからこそ脱走せざるを得なかった兵士たちの気持ちに寄り添えるジュノをチョンヘインが好演。

クズな相棒を演じたコビョンピョの扱いの酷さに笑えてくるし、また新たな相棒になったクギョファンが良いんですよ。
チョンヘインとクギョンファのバディものとしてとても楽しめます。

大好きなキムソンギュンは上官役。
ソンソックはもうちょっとたっぷり見たかったかな。
チョイ役で、ヴィンツェンツォのクリーニング屋店主や、釜山のDP役ではいろんな作品で何かと見かけるペユラム、特別出演でクォンヘヒョも出てて、キャストも良かったです。

20

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2回目: 2023.7.29

すごく楽しみにしてたシーズン2の配信が始まり見始めたのですが、シーズン1の総集編を見ても思い出せないシーンもあり、ちゃんと2を見るために、1を見ておさらいしました。

ソクポンがあそこまで追い詰められていき、そこに至るまでに誰も何もしてこなかった、問題をわかってて見て見ぬふりしてた傍観者への批判も痛烈で、これは軍隊だけの問題ではなく、いろんなことに通じる事だと思いました。

ソクポンを演じたチョヒョンチョルの、穏やかで優しい感じと、一転して狂気を孕んでいく演技も素晴らしく、百想芸術大賞でこの作品が評価されて男優助演賞を受賞した時のスピーチが、ほんとに素敵だったんですよね。
話し方も優しく穏やかで、語り口も含めてとても心に残りました。

このドラマは韓国内でも大きな話題になったそうですが、軍隊の非人間的で人権無視の支配構造は少しは改善されたのでしょうか。
2014年の設定ですが、それから10年近く経った今、携帯電話を持ち込めるようになったり、コンプライアンスの意識も高まったという話も聞きます。
1953と書かれた水筒のようにいつまで経っても変わらないことへの苛立ちが描かれていたので、この作品が、軍組織が変わるきっかけの一つになってたとしたら、この作品やエンタメの持つ力の大きさを感じます。

32
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