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しずかちゃんとパパのdarumaのレビュー・感想・評価

しずかちゃんとパパ(2022年製作のドラマ)
4.2
「ウソ婚」の蛭田直美脚本に惹かれて、地上波7話(最終話直前)まで。これめっちゃいい…!目から鱗&泣きまくり。耳の聴こえないパパとその娘(娘のほうが主人公)のお話、と書くとよくある流行りの感じに思えますが、結構真実を突いているし、まさに「優しい世界(サブタイトルにあり)」が素敵。

まず初回でかなり破天荒っぽい主人公像を見せたかと思いきや、それは父親の耳が聴こえない事に起因するものでは…?という指摘に衝撃。確かにそう…単純に「親の耳が聴こえない」という事だけではなく、その人と生活をすると自分がどう変わってしまうのか、それが目から鱗だった。

パパとしずかちゃんの関係性は知った状態で観始めたのですが(耳の聴こえない父親とその娘)、1話を観ていて、あ、これ「コーダあいのうた」か…と気づいた(遅!!)。そう思えば思うほど、最初は吉岡里帆さんがあの映画の主人公に見えて仕方ありませんでしたが(なんだか雰囲気も似てた)、話数がどんどん進むにつれ、もうオリジナリティそのものです。

その後も、風船で振動が伝わる話とか、結構感動系が…(でもこの時点ではまだ、音楽ネタは映画と同じ!と思った)
とにかく映画よりも時間が長いので、物凄く丁寧に掘り下げてあって、そこがとてもいい。

まず、道永さんのキャラクターがいい。
なんていい人なの…最初はすっごく真面目な頭の固い人、みたいな感じでしたが、とにかく、しずかちゃんへのアドバイスが斬新で素敵。
発している本人は全くそう思っていないのだろうけれど…単純に自分の感想を述べているだけなんだと思うけど、何にも囚われていない考え方というか、しがらみがない、物凄くフラットな人。
個人的に、しずかちゃんの家で柱に書かれた身長を見た時の言葉、泣いてしまった…察するに余りある、を文字通り体現してた。

最初はしずかちゃんが天使のように天真爛漫だな…と思ったのですが、今では道永さんが天使みたいだと思います。

そして、あくまでもこのドラマの主人公はコーダ(聴こえない親を持つ子ども、自らは聴こえる)であるしずかちゃんで、鶴瓶さん演じるパパがメインではありませんが、時折、パパが筆談に使うボードに書く言葉が、めちゃくちゃリアルで沁みます…気を遣われるほうが気を遣う、など。
7話の道永さんのお母さんとのやり取り、物凄く切り込んでいました。泣きました…

あと、5話の同窓会の最後の言葉(何故今まで来なかったのか。それは楽しすぎて普段の生活が辛くなるから)と、画角が変わって音の無い演出もとても良かった。
まだまだ障害者当事者にとっては厳しい世界、住みづらい世界なんだな…(当たり前だけど)、という事をひしひしと感じて、また泣いた。
私はこういう「どうしようもなさ」にとても弱いです。(それは障害関係なく、色々な普通の事でも。言い方はちょっと悪いですが、エモ系に繋がる感じです)

最初は鶴瓶さんか!と思いましたが(しょっぱなから美女に弱い感じがシティーハンターの獠ちゃんかと思いました!(笑)あと途中、ゆるキャラ候補を募るシーンがあるのですが、ここにいるじゃん!と私も思ってしまった、笑。地でゆるキャラ…違)、いやいや!!すっかり忘れていましたが、そうだよこの方は「ディア・ドクター」の方なのよ!実はめっちゃくちゃ選んで役者のお仕事されているのでは…!?すっごくハマっています。

道永さん役は誰がやってもめっちゃいい役だと思いますが、こちらも中島裕翔くん、ハマり役。
個人的には「康にぃ」を演じている稲葉友さんが、結構美味しい役だなぁ…!と思います。
さくら先生役の木村多江さん×鶴瓶さんって、どこかで共演ありましたっけ…?お似合いです!

でも、これはまさに吉岡里帆さんの為の作品…
エンディングの写真がそうかな?と思っていたら、回を追うごとに御本人感が強まってきました^^
BSだとエンディング映像があったんですね!あと曲があったのか…(そういえばオープニングクレジット形式ですね)7話の挿入歌でかかっていた曲がそうなのかな?

コーダの話だけではなく、地域再生も絡めていて(むしろ最初はそっちが強くて、ちょっとターゲット年齢層が高めかな…?と思いました)、肉付けが上手な感じです。でも、無駄な所はちゃんと削ぎ落としている。例えば道永さんの母親(いかにもセレブ)が出てきた時、下世話な私は「絶対対立する…!」と思いましたが、そんな事にはなりませんでした。道永さんの発想を持つ子を産んだ親なのですから、言われてみれば確かにそう。いかにもになりそうな所で変に盛り上げようとせず、でもちゃんと大事な事には切り込んで来る。そういう脚本がとても素晴らしい。

あと、これはストーリーの組み立てではよくあるかも知れませんが、序盤で出てきた事が、後々回収される…という細かい展開がいくつかあり、結構グッと来ます。

しずかちゃんのお母さんの言葉、聞こえないほうが良い事もある、という意味に取れて、それもグッと来ました。

本作のBSでの初回放送時期をよくよく見てみたら、映画(コーダあいのうた)の日本公開と同時期だったんですね…!てっきり映画に影響されて作ったのかと思いましたが(アメリカでの公開はもっと早いので着想は得ているのかもしれませんが)、旬のテーマをうまく掴んでいるのが流石NHKといった感じです。
ちなみにこれの翌年の枠が「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」なんですよね。どちらも障害者の家族物です。当事者本人ではなくて、家族にスポットを当てているのが良いなぁと思います。

最終回がとても楽しみです!
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