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慶余年 ~麒麟児、現る~のなっこのレビュー・感想・評価

慶余年 ~麒麟児、現る~(2019年製作のドラマ)
3.2
見れば見るほどハマります。とりあえず見ることをおすすめします。イケおじ多数出演してます、それ目当ての方もおすすめ。

主人公が「現代知識を持ったまま戦乱の世に転生」というところが面白いポイントかな。実は冒頭で、語りの場が設定される。その舞台が現代的な図書館のような建物の内部で、そのシーンもお気に入り。この物語は、大学生の張慶(チャン・チェン)によって書かれたSF小説コンテストに応募した作品ということになっている。それが、難病に侵された青年・范閑(ファン・シエン)が、現代の記憶を持ったまま乱世に転生する物語「慶余年」。もちろん、このシーズンの終わりには無事この語りの場に戻ってくるのだが、とっても気になる終わり方をするので、早く次期シーズンが見たくてしかたなくなる。私はちょっと色々確認したくて、そのまま直ぐにネット検索してしまった。そのぐらいハマる作品。

主人公の笵閑が転生する世界は、一見すると戦乱の時代のよう。と言っても、中国の長い歴史の中で一体どのあたりなのか、見当つかないまま物語は進んでいく。でも、過去、または異世界だと思っていた世界は実は…という種明かしは、このシーズンの後半で明らかになる。現代よりも少し後退した世界に見える舞台は、南慶国。ここでは、皇子たちが皇位継承を巡って争い、陰謀が渦巻いていた。主人公ははじめ、ここで無難に平穏な生活をしようと試みるが、どうもそうはいかなくて、どんどん陰謀の渦に巻き込まれていく。その現代っ子的な感覚が物語が進んで行っても全く衰えていかないところが主人公の魅力。異世界にその身一つで迷い込んだとき、どんなスキルや知識が身に付いていたら生き抜いていけるだろう、とちょっと考えさせられる。武術や毒薬の知識はその身を以てその時代の時間をかけて身に付けていくけれど、現代の最先端の科学的な知識と、何より彼の文学の素養が彼がその世界で生きていく武器になっているところが個人的には何より感動的だった。彼は『紅楼夢』のその世界の作者として世に知られることになる。そして、もうひとつの文学的な才能によって何度となく危機を脱する、その様子が痛快。文学を愛する者としては。子どもの頃に暗誦をするのは、暗記の箱を頭の中に作るためだとかいうけど、彼ほどその頭の中にいっぱい詰め込んで異世界を生き生きと生きている人はいないと思う。私が異世界でこの頭から取り出せる知識や言葉なんてほんのわずかだな、と反省させられた。芸は身を助くというし、異文化に迷い込んで、請われれば一差し舞える人でありたいとは思ってるし、何かひとつでもその身で自身の文化を代表できるものを持っている人に憧れるけれど、現実にはそれ程身に付いていないな。主人公のストーリーテリングの才能はそのまま中国の豊かな物語文化を象徴しているように思えて、改めて長い歴史をもつこの国の物語をもっと知りたいと素直に思った。

高官の隠し子として生まれ、生後すぐに母を失い、都から遠く離れて育ったのに、彼を都へと呼び戻す使者がやってくると同時に命も狙われてしまう。主人公に関わる登場人物が少しずつ増えていき、隣国の思惑も絡んで物語はどんどん拡がっていく。主人公が想い人以外の女性にも好かれてしまう魅力が私にはいまいちわからないけれど、主人公だからモテる、ということで納得しておく。帝の跡目争いの皇子対決もいろんな人の思惑が入り組んでて面白い。私の推しは二皇子。
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