こたつむり

わにとかげぎすのこたつむりのレビュー・感想・評価

わにとかげぎす(2017年製作のドラマ)
4.0
なかなかステキな物語でした。
古谷実さんが原作とは思えない仕上がり…とは言っても、原作をキッチリと踏襲しているんですよね。オリジナル要素は少しだけ。でも、その少しの演出がエモいんです。最高なんです。

何よりも素敵なのが本田翼さん。
ぶっちゃけた話、第1話は微妙だったんですけどね。ぎこちなく感じるのが“役柄”なのか、それとも“本人の資質”なのか判別できず。これで終われば「戦犯」なのは確実でした。

しかし、気付けば彼女が“希望”の光。
ひとつひとつの台詞、表情、仕草が尊いんです。全身でぶつかっている感じが最高に萌えるんです。一歩間違えれば“猟奇的な物語”なのに、彼女の存在感が“希望”を支えているんです。

これが別の女優さんだったら。
そんな仮定に意味はありませんが、たぶん“エモく”なかったと思います。造形は美人なのに、色々と抱えている…そんな深みは技巧で処理されていた気がします。

それと地味に貢献していたのが主題歌。
TOKIO最後(現時点)のシングル『クモ』。
胸の奥の何かを削ってくるんです。だから沁みるんです。いやぁ。こんなエモい曲を作るグループだったんですね。寡聞にして知りませんでした。

また、何気に配役も神懸っています。
誰も彼もが物語世界をガッチリと構築していました。吉村界人さんは古川実ワールドに出てくる登場人物っぽいですし、パチンコ屋の女性を演じたコムアイさんは歌手とは思えない熱演。下着を見せることも厭わないのはスゴいと思います。

そして、主人公の有田哲平さん。
基本的に“キモくない”んで、原作を考えれば微妙なんですけど“良い人”である雰囲気が物語を別次元に押し上げていました。中年の物語なのに青春の匂いがするのは…きっと有田さんのお陰だと思います。

まあ、そんなわけで。
原作の持つドンヨリとした雰囲気を期待するのではなく、血しぶき飛び交う中年の青春物語として捉えたほうが良い作品。序盤は微妙ですが、登場人物が揃う第3話から加速しますので、そこまでは大目に見てください。

そして最後に余談として。
フィルマークスにおける本作の登録名。本当は『きす』じゃなくて『ぎす』ですよね?まあ、意味が分からないタイトルなんで間違えるのも当然ですけど。

で、『ぎす』って何?
こたつむり

こたつむり