素晴らしいドラマだった。傑作です。
今年見た中でもベストと言っても過言ではない。

内容はまさに『倦怠夫婦版　君たちはどう生きるか』だった。

おそらく20代の若者が観ても何も響かないと思うけど、30半ばを超えたあたりの中年が観ると痛烈に心に訴えかけるものがあると思う。

人それぞれに生き方があって、何が正しいかというのはないと思うけど、「納得できる人生を送るためにはどこかで折り合いをつけなければならない」という事を教えてくれるドラマでした。

全ては手に入らない、何を手に入れて何を手放すか…
たくさんの問いと学びがありました。

「可能性を考えるのは人生における罠だ
別の機会や逃した機会なんて考えたくない」

上記をはじめ、この作品の中でアラフォー世代は思わずメモをとりたくなる言葉がいくつもあるはずだ。

これは邦題とあらすじのせいでコミカルな40代の男の話かと思われがちだが全く違っている。

すでに人生で色々な選択をしてきてこれ以上何か劇的に人生が変わる見込みはなくなった気がする、というような多くの中年以上の世代には身につまされるものがあるはずだ。

自分は数日なんか元気ないなと思ったらこのせいだった事に気がついた。笑。

それぐらい刺さり引きずってしてしまった。


NYの富裕層が暮らすアッパーイーストサイドのパワーカップルの離婚後とその真相が少しずつが描かれていく。

人生はこれでいい、と言うことがない。

周りから見れば輝いていても実は全然違っていたり、実は気持ちの上で綱渡り状態で生きている人も多いのかもしれない。

白黒つけられない、グレーのままで自分と折り合いをつけるしかないことがどんどん多くなっていく。

前半はあらすじの通り、医師で夫のジェシーアイゼンバーグの目線で語られる。

全編通してジェシーアイゼンバーグの大学時代の親友の女性（現在は郊外で主婦）のナレーションにより物語が進行する。※彼女の声である理由ものちに効いてくるのがまず面白い。

前半は昨年の傑作映画「わたしは最悪。」の男バージョンと言ってもいいだろう。40歳をすぎ、2人の子供がいて妻と離婚。子供の面倒を見なければいけないのに彼らをキャンプに行かせて自分は出会い系で知り合った女性と情事に励んでは自己嫌悪したり、連絡が取れなくなった妻のことを疑って勝手に家に入って不倫を勝手に確信したり、医師の仕事も誇りではあるが自分に言い訳しながら昇進できずにいる。自分の人生本当にこれでいいのか、これで良かったのかと悩まずにはいられないのに、それを忘れるために女性と寝たりしている。

そして失踪した妻は一体どこに？なぜいなくなってしまったのか。

驚く事にこのドラマ、ラスト2エピソードで急に転調する。そしてなぜか涙が出てきてしまうのだ。

自分は最悪だ。でも、最後はやっぱり何か「良い方向」を信じていきたい。どうせなら。


ジェシーアイゼンバーグとクレアディンズの2人は言わずもがな、すごかった。

鑑賞記録。
いいドラマだった。ラストもいい。