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不適切にもほどがある!のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

不適切にもほどがある!(2024年製作のドラマ)
4.3
1986年――。小川市郎(阿部サダヲ)は、“愛の鞭”と称した厳しい指導をするのが当たり前な昭和の体育教師。野球部の顧問も務め、生徒たちからは「地獄のオガワ」と恐れられていた。
その一方、家では男手一つで17歳の一人娘・純子(河合優実)を育て、娘の非行に手を焼く普通の父親でもある。最近は市郎の帰宅時間をやけに気にする純子が男を家に連れ込み“ニャンニャン”するのではないかと心配していた。
ある日、市郎は、いつものようにタバコを吸いながらバスで帰宅中、ついウトウトしてしまう・・・。
目を覚ました市郎の目に飛び込んできたのは、パンツが見えそうなスカートを穿き、耳からうどんを垂らした女子高生がバスに乗り込んでくる姿だった。
その姿に違和感を覚え指摘する市郎だが、乗客たちは車内でタバコを吸う市郎こそおかしいと口論になってしまう。
逃げるようにバスを降りた市郎が目にしたのは、見たこともない異様な格好をする人々となんとなく変わっている景色だった。
なんとか見つけた馴染みの喫茶店「スキャンダル」に飛び込み、事態が飲み込めないまま市郎は、カウンターにいた犬島渚(仲里依紗)のビールを勝手に飲み干し、口論になってしまうのだった・・・。
一方、1986年の同日、純子は向坂キヨシ(坂元愛登)から突然告白されていた。
キヨシは、社会学者である母・サカエ(吉田羊)と共に令和から昭和にタイムスリップしてきた中学生。
街中で偶然出会った純子に一目ぼれしてしまったのだ。純子は“ムッチ先輩”こと秋津睦実(磯村勇斗)に密かに思いを寄せているにもかかわらず、キヨシを家に連れ込もうとするが・・・!?
宮藤官九郎が、タイムスリップコメディに挑んだ意欲作。
コンプライアンスなんてなかった昭和のあるあるが散りばめられ、昭和世代は懐かしいと笑い令和世代はドン引きしつつ、形ばかりの働き方改革や炎上を恐れ過ぎて自己規制しすぎな風潮などを風刺しつつパワハラやセクハラの基準を視聴者に問いかけながらも、多様性を謳い上げながらも自分の価値観と違う人や不倫した人などを誹謗中傷する風潮が止まない令和も風刺し、市朗と純子と渚の意外な関係が明らかになり「残酷な未来が待っているとしても、時代をよくしていくのは俺たちだ!」という宮藤官九郎のメッセージを込めた中盤から尻上がりに面白みが、それぞれの回のテーマを込めたミュージカルシーンでは尾崎豊やクイーンなどをオマージュしつつキャラクターの心情を込めたミュージカルナンバーも面白みが増していて「話し合いましょう」「寛容になりましょう」というテーマが結実した爽やかな後味。
令和の価値観を学びアップデートしていく市朗を繊細に演じる阿部サダヲや父親思いなスケバン純子をキュートに演じる河合優実や子育てに悩みながらもテレビ局のお仕事に奮闘する渚を演じる仲里依紗や山本耕史や吉田羊の硬軟自在な演技も楽しく、ルッキズムなどの間違えた使い方やインティマシーコーディネーターを扱った回がインティマシーコーディネーターの方からクレームがあったほどの迂闊さはありつつも、ネットニュースで言われるように「昭和の価値観でコンプライアンスを笑い飛ばす」ではなく「昭和も令和も笑い飛ばす」楽しいタイムスリップコメディドラマ。
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