ウシュアイア

昭和元禄落語心中のウシュアイアのレビュー・感想・評価

昭和元禄落語心中(2018年製作のドラマ)
4.5
戦中から現代と落語界をめぐる環境が激変する中を駆け抜けた稀代の落語家八代目有楽亭八雲の一代記。
いろいろと多くのエピソードを盛り込むことができただろうが、原作同様にコンパクトにまとめてテンポよく進んでいく感じがよい。

また、キャスティングがとてもよかった。
メインキャストはもちろん主人公の師匠の七代目・有楽亭八雲を演じる平田満さん、松田さん役の篠井英介さんでばっちり脇が固まっていたように思える。ただ、岡田将生さんの八代目・有楽亭八雲は、演じ分けができていたものの、若いころはぴったりハマっていたが、晩年はちょっと苦しかった気がする。名作なので、是非多くの方に見て欲しい。

<原作の感想>
架空の落語家・八代目有楽亭八雲の一代記で、一人の人物の少年期から老齢期の人物像をちゃんと成長・老成させながら、一貫性をもって描いているところでまずすごいと思う。ドラゴンボールの良くないところですが、悟空やベジータは確かに強くなっているけど、人間としてはあまり変化していない。大人になってみると、この変化の無さにちょっとげんなりするところがあって、キャラクターとしては変化があるピッコロの方が魅力的だったりする。この作品に出てくる八代目有楽亭八雲とその弟子与太郎の変化が、それぞれ一人の人物として破綻することなく成長・老成していっているのが、何ともリアリティがあってよかった。

ストーリーは無二の親友でライバルであった二代目・有楽亭助六を不幸な事故で亡くし、孤高の落語家として弟子も取らずに厭世的に生きているところに、弟子入り希望の与太郎が押しかけてくる、というところから話は始まる。この筋書きは良くも悪くも夏目漱石の『こころ』っぽい。多少ネタバレにはなるが、時代の変化との向き合い方、自分が果たせなかった想いを若い世代に託す、などのテーマの部分でも似ている気がする。時代の変化との向き合い方については、大人だからこそわかる部分があるかと思う。
老若男女問わずおすすめしたい作品。
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