April01

ザ・クラウン シーズン5のApril01のレビュー・感想・評価

ザ・クラウン シーズン5(2022年製作のドラマ)
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記録
フィクションと前置きしろとの圧力があり、物議を醸したわりには、自分なりに要所要所でファクトチェックしながら確認しつつ、言うほどフィクションでもないじゃん!というのが率直な感想。
もちろん細かい部分で、その発言はないとか、そういう場面はないとか、当事者の関係者、言い方悪いけど利害関係者からしたら、否定したい部分があることは理解できる。
そして権力関係からも、チャールズは故エリザベス女王の後を継ぐキングであり、クラウンを冠する身分に無事収まった今となっては、彼に対する名誉棄損という方向に、特に皇室側に立つ支持者の立場からもフィクションを強調したい気持ちはよくわかる。

でも日本で言うところの文春砲みたいに、スキャンダルとしてすっぱ抜かれた事実は消しようもないので、実際にあったことを土台にいわば脚色の範疇として許容範囲であると、英国民でない部外者の立場としては思わざるをえない。

そしてこのシリーズの最初から思ってたことであり、素直な気持ちとして隠しようもないので、言わせてもらうと、クラウン、だから何?なんです。
立憲君主制の意味も歴史もよく理解しているつもりだし、宗教を背景に神聖な崇拝対象である皇室を否定する気はサラサラない。
そしてもちろん我が国も綿々と続く皇室の伝統はあるわけで。

しかし現代社会において、民主的な選挙を経ないで権力を持つ、までは許容範囲としても、選挙を経て選ばれた指導者に偉そうに意見する、はたまた見下す(労働党トニー・ブレアに対する侮蔑視線は脚色にしてもあながち嘘ではないでしょう)など、フィルターを経ずに得た地位に収まっている人達の苦悩を見せつけられても、ごめんね、あまり同情できない。

何らかの階級や社会的地位に、それが士農工商、カーストであれ、産まれや育ちに制約を受けはしても、国のトップになるというのは相当なことであるべきだという単純な理由ゆえに。

だから制度からはみ出る異端者としての苦悩をダイアナ視点で描いた部分の方が共感できてしまう。

特にチャールズはこのドラマのせいではなく、ダイアナとのイザコザのスキャンダルの頃から良い印象がない。
そしてカミラはチャールズに愛されていることを確信しているゆえの図太く強気な姿勢が不快。
元々は結ばれるべきだったのに、それがかなわなかった、愛を貫いたとか美談になっていることを自分は支持できない。英国民でないので受け入れる必要もない。カミラは計算高く要領がよく、ダイアナとは正反対。

歴史は権力者によって書き換えられ、時の流れの中で死者は弱く忘れられ、生者が強く勝ち残る、人々の記憶をも書き換えるかのように。

これまで本シリーズでダイアナを演じたエマ・コリン、映画「スペンサー ダイアナの決意」のクリステン・スチュワートというノンバイナリー、バイセクシュアルをカムアウトしている中性的な女優がハマっていただけに、エリザベス・デビッキは痩せこけた体形は鬼気迫る感じがしたけれど、正直あまりピンとこない。

ショートヘアの後ろ髪が不自然すぎて、ウィッグ感がアリアリなのは何でこんなに手抜き?と思えてしまって。
そう考えると、「スペンサー ダイアナの決意」でヘアメイクを担当した日本人ヘアメイクデザイナー吉原若菜さんが素晴らしかったことを改めて再確認。

それにフィクション圧力かけたとしても、例えばエピ6のイパチェフ館、つまりロシア皇室との関係など、事実を知るきっかけになる良い教材であるのは疑いのない事実。
それを言いだしたら、ウィンザー公の付き人が、モハメド・アルファイドの従者として結果として皇室繋がりになってるなど嘘ではない事実の豆知識として興味深い部分も多い。

ドラマなんて脚色ありき。観る側が事実を拾い出して得るものがあれば差し引きプラスになるくらいの気持ちで見るくらいで丁度いい。
April01

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