こたつむり

踊る大捜査線のこたつむりのレビュー・感想・評価

踊る大捜査線(1997年製作のドラマ)
5.0
今どき風に言えば“神ドラマ”。
配役、音楽、脚本、題材、舞台、演出、雰囲気…どれもこれもが一級品。視聴者の好みもあるとは思いますが、全方位に向けて隙がありません。

何よりも重要なのが“時代の風”。
「刑事ドラマは本作以前と以後に分けられる」と言われた作品ですが、歴史に楔を打ち込めたのは、世紀末が近づいた1997年の空気を読み取ったから。

お仕事ドラマとしてのリアリティ。
根底に秘めたカタルシスの味付け。
視聴者の好みが細分化する前のタイミング。

『太陽にほえろ!』などの古典に目配せしつつ、社会現象となった『新世紀エヴァンゲリオン』にも敬意を表して、その空気を取り入れる…このバランス感覚が本作を“化け物”に仕上げたのです(プロデューサーである亀山千広さんが後にフジテレビの社長になったのも当然ですね)。

だから、放映から25年近く経っても。
古くないのです。
キラキラと輝いているのです。

勿論、時代を感じる部分はありますよ。
お台場周辺の“何もない感じ”やら、パソコンやポケベルなどの電子機器やら、どこでも煙草を吸える雰囲気やら、主人公を筆頭にデリカシーのないセリフやら…懐かしいものばかりです。

また、出演者の皆様方も同じ。
メインである織田裕二さんや深津絵里さんは変わっていない気がしますが、今では落ち着いた雰囲気の篠原ともえさんが「くるくる~」と言っていますし、阿部サダヲさんがサラサラの長髪で出演していました。貴重な絵面です。

まあ、そんなわけで。
歴史にその名を刻んだドラマ。
根底に秘めた“間違ったことは間違っていると言う真っすぐな気持ち”は今でも魂を焦がしそうなほどの熱量。第10回、そして最終回は涙なくして観ることはできません。

また、観る側の立ち位置が変われば受け取り方が変わるのが名作の証。放映当時は青島の気持ちに寄り添っていましたが、今は室井さんの気持ちが痛々しいほど分かります(僕はキャリアではありませんが)。体面に拘るだけの大人にならないように…と改めて思った次第です。
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