あまね

トクサツガガガのあまねのネタバレレビュー・内容・結末

トクサツガガガ(2019年製作のドラマ)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

主人公の叶はいわゆる『隠れオタク』。
大の特撮オタクであることを、職場にも家族にも隠して生きている。
けれど、《好き》を貫くうちに、仕事も立場も性別も超えてオタク仲間は増えていき――。

『隠れオタ』には身に覚えのあるネタが満載! 
愛と萌えに生きているけど、バレるわけにはいかない。そんな叶のコミカルな葛藤や、ピンチの時に推しを思い浮かべて切り抜ける姿は、オタクならわかるはず……!
叶が大好きな特撮と現実とがリンクされ、テレビ番組の一場面が随所に挿入されたり、ヒーローや怪人が語り掛けたりする演出が面白い。
叶と親しくなっていくオタク仲間も、同世代の女性ばかりでなく、小学生やヤクザ顔の美少女アニメオタなど、バラエティ豊かで個性的だ。

だが、主人公・叶のキャラが、私には合わなかった。それも致命的に。
特に母親――オタク嫌いな毒親で叶の趣味を全否定する『敵』として描かれる存在に対する叶の態度に、終始イライラさせられた。
母親にずっと抑圧されていたとしても、家を出て自活してオタクライフを満喫している状態であれば、あそこまでビクビクしないだろう。
どうしてあんなに挙動不審? なんであそこまで卑屈? 
完全に親にライフラインを握られている十代の学生のような反応に、違和感しかなかった。

また、職場や日常生活での叶の態度が、何かにつけてぎこちない。
いちいちビクッとしてみたり、ワンテンポ遅れた態度をとってみたり。
隠れオタならそんなわかりやすい態度にはならないと思うけど。だって隠れないよ、それじゃ……。

どうにも『隠れオタ』の特徴を誇張しすぎたのではないかと感じる。
往年のステレオタイプなオタクに対してさすがにこれは違うだろうと感じるのと同じく、ネガティブには描いていないけれど、これちょっと尖らせすぎだろうって、かけ離れて感じてしまうのだ。

あと、単純に叶が甘ったれで苦手だった。
後半、母親との対決であの暴言。相手も悪かったので、あの展開自体はありだと思うし、実際、すっきりもしたのだけれど……その後がダメだった。
あそこまでひどい決裂をしておきながら、次の回ではなしくずしに仲直りしようとしているというのが、どうにも甘ったれ。
相手を殴って家族じゃないと叩きつけて追い返して、その次の回で、ちょっと気まずくなっただけ~みたいな感覚は、なんだかんだいってでろでろに甘やかされてそれに乗っかって生きてきた感覚そのものにしか思えず、『敵との戦い』なんて仰々しくうたってるけど、せいぜいが十代の反抗期としか思えなかった。

友人との関係にも、その甘さが随所に現れている。
叶が動いているようでいて、実は相手が許容している。それで何とか前に進んでいる。そういう印象だ。

また、叶が幼い頃の《好き》を思い出してオタクになった経緯も、違和感がすごかった。
昔好きだったヒーローのビデオを見て、好きなものは好きでいいんだと思い出して感動して――という流れだったのだが、いや、オタクが過去の推しにハマるのってそんな感動物語よりも、うわやっぱカッコいい推し最高!テンション爆上がり!みたいなノリじゃないかな……。
推しへの尊さで涙は溢れるかもしれないが、己の境遇とか好きだったことを思い出した《自分への》想いで泣いてオタクに舞い戻るっていうのは、オタクというより自己愛だ。
あの場面では、特撮が好きだった過去の自分への想いはあるが、推しへの愛は見えなかった。

……といった諸々で、叶が作られたオタク、オタクの特徴(イメージ)を制作側が詰め込んで『今どきの隠れオタクのお姉さんってこんな感じだよね』って誇張して作り上げたキャラクターに見えて、どうしても受け入れられなかった。

要は、私というオタクが見たら、なんだかオタクとしてしっくりしなかったという理由で、この低評価だ。
そこが気にならない人、叶というキャラクターに好感を持てる人ならば、コミカルで楽しい物語だと思う。
あまね

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