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Dr.コトー診療所2004のmatchypotterのレビュー・感想・評価

Dr.コトー診療所2004(2004年製作のドラマ)
4.5
2004年『Dr.コトー診療所』のSPドラマ。

前編と後編の2話で描かれるSPドラマ。
東京から療養でやってきた喘息を持つ少女がいる一家、小林薫の奥さん、時任三郎の息子たけひろの受験問題。

たった2話で、ものすごい濃密な話を織り交ぜる。前後編で尺も映画2本分ぐらいあるにはあるが、それを感じさせない面白さ。

相変わらず目の前に広がる原風景。
風にたなびく旗が清々しい診療所。村は豊穣を祝う祭りの最中、小林薫の奥さん、柴咲コウの母が、まさかの病に倒れる。

これを機に、村は再び暗澹とした重苦しい気配に包まれる。

そんな小さな村だからこそ小さなことが大きくなり、他人事なんてものはなく、小さなことなんて何もない。

人は人と寄り添い生きていく。
それが医者と患者だろうと、夫婦だろうと、親子だろうと、親友だろうと、幼き恋心だろうと。

みんながみんなで寄り添い、向き合い生きている。
希望も絶望もみんなで分かち合う。
みんなが悩んでいること、抱えていること、迷っていることをみんなで支える。

厚かましいような、お節介なような。
ただそれがどれだけ心強く、路頭に迷う人にとっての光になることか。

もともと医師の志に真摯に向き合えなくなりかけていたコトーがこの島にやってきて、誤魔化しも適当も通用しないこの村で自分を取り戻しながら成長していく。

その“部外者”のコトーの摩擦で村にもキッカケができ、錆びついていた歯車が動き出したような。

小林薫の後悔や、柴咲コウの迷い、幼きたけひろの決意。
儚く、切なく、頼りなく。
それでも事は待ってはくれず、考える時間を与えてくれず。

それでも、コトーが来た事で、変わったことがある。
ちゃんとした医者どころか、この島にこそ相応しい医者が来た事で、ある意味、みんなで成長していくような。

独特の時間が流れるこの島で育まれた友情があれば、愛もある。
島での出来事も、これから島の外に巣立つ出来事も、皆が自分のことのように思い、そっと背中を押す。

一方で、後悔や失意に暮れやり場のないやるせなさが漂う闇の中にも、光はある。

きっと最先端の医療現場ならばヤキモキする必要もないこともあるのかも知れない。
少しでも良い治療をと別の病院を転々とするのも選択肢かも知れない。

この島とここに来た1人の医者コトー。
そこで起きる素朴で、剥き出しで、めちゃくちゃ厳しく温かい化学反応が最高のTVドラマを継ぐ壮大なSPドラマ。

暖かさもスケールも感動も、もはやSPドラマではなく、映画レベル。

大塚寧々は綺麗だし、柴咲コウが元気ないし、時任三郎にも泣かされるし、この島でのひとときは本当に最高。


F:1919
M:1160
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