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刑事カーディナル 悲しみの四十語のtorakoaのレビュー・感想・評価

4.3
カナダ国歌🇨🇦おーきゃーなだー♪が何度も脳裏をよぎる広大な景観。広大な雪原、というより氷原といった感じの場所で死体が発見され、家出であろうと断定され捜索が打ち切られていた行方不明の少女と判明。ただ一人家出説を否定し、事件から(殺人課から?)外されながら手がかりを求め続けていた刑事カーディナルが捜査に呼び戻される。といった話。ややグロあり。

予想以上にクオリティ高いドラマだった。『トゥルー・ディテクティブ』に引けをとらないと思う。観ようか迷ってるなら推しとく。

結構前にスーパードラマTVのCMでチラッと見た極寒の地置き去り殺人のやつが気になって、カナダ制作ドラマだしこれかもしれない、一挙放送あるしとりあえず観てみようと思ったのだが、録画してよかったーと思った。土曜深夜にシーズン一挙放送していく模様。視聴環境あるなら是非。

アメリカ舞台の作品は見過ぎているぐらいに多く観ている気がするが、カナダ舞台の作品を観る機会はあまり多くないので、ちょこちょこ興味深いものがあった。カナダ騎馬警察隊(RCMP)が出てくるなら警官の汚職だろう、とか。先住民の弔い方、考え方もちょこっと出てくる。
そういうのを差し引いて見ても、
多分この脚本をアメリカに持ってったら絶対こうはならなかっただろうと思うところが秀逸。

たとえば『クワイエット・プレイス』の階段にあったあれ。何故かあんなにも飛び出していたあれ。ほらほらここにこんなのありますよー後で出てくるから覚えといてくださいねーほらほらさっきの出てきましたよーとばかりに見せつけてきたことにかなりげんなりさせられたが、程度はともかくこういった演出は定番で、慣れきってもいる。
で、この作品にはそういった、わかりやすさを重んじる気風は感じられない。くるだろうなと思ってるとあっさり素通りしていく感じで拍子抜けするぐらいだった。いい意味で。
どちらかというとさりげなさを重んじているようなテイストで骨太感ある大変渋いドラマだと思う。

ただし、さりげないゆえに多少わかりにくさはある。
連続殺人事件と目される事件を追う主人公達、麻薬組織との内通疑惑、主人公の人となりや過去といった謎、事件や犯人の謎。手の内を見せていない複数の線が混在し、どれが何とどう繋がるかが見えづらい。そして先述の通り、ほらほらあの人ですよーみたいなわかりやすい演出してくる訳でもないので、メイン数名以外は把握できてくるまではこの人誰だっけ?てなったりする。一度見たら覚えられるぐらいの、もうちょっと明確に判別できる容姿の人キャスティングしてくれてたらなーと思ったりもした。

正味43分ぐらい×6話。2時間程度の映画2本分と考えると、そう長くはない。
3話目ぐらいから犯人周辺のストーリーが加わり、犯人に辿り着けるか、新たな被害者を救えるか、といった引きが加わる。引きが強く、過剰演出感もないので気分よく引っ張られる感じ。一気に観てしまえると思う。
演者も個の主張がなく、私演技してます感はほぼないので、観ていて疲れない。

主演の人は男前過ぎない男前、地味イケおじ。雰囲気、佇まいが凄く普通な感じで、刑事もの探偵ものにありがちなデキる人感、特別な人感、変り者感、いずれもない。言動も普通な感じ。俺すごいだろ感一切ない。珍しいぐらいに地味な主人公で、行方不明者を何とか見つけ出したい、救いたいという思いのみで動いている実直な感じに好感持てる。特別人情味ある感ないのにちゃんとある感じがよかった。

相棒となる女性は勘がよくてデキる人感も野心もある。しかしながら類型的なデキる女感ではないところがよかった。さらっと女性ならでは感(細かいとこに気づく)出してたりするが、どうよデキる女でしょ的なドヤ感なく描写してるあっさりめな感じが小気味よかった。
互いを信頼していくのもわかるようにできてて、信頼関係が好物ゆえ、その辺も気分よく観れた。

女性上司はお役所仕事感で有能そうではないんだが、何でこの人が昇進できたか何となく想像つくようになってる気がする。
あと、結構な泥はねでそろそろ洗車しようか、て感じに汚れてる車も何かよかった。



ちょっとネタバレになるかもしれない。



惜しいと思ったのは盗みに入る時間帯。独り言はそこまで不自然とも思わなかったが、合せ技だと一気に嘘臭くなりすぎるかなー。溺死の件も残念。しょうがないんだろうけど。
相棒の旦那は、勘と洞察力に優れ野心もある彼女が何でこの人選んだのかわからなすぎる感じがよろしくなかった。野心家であることを表現するために使われただけな感じがちょっと。
あとサブタイトルの意味がちょっとわからなかった。もしやあれのことかなーみたいなのはないでもないけど。

寒冷地仕様の住宅てあんなもんでいいのかなーとかちょっと気になるところがあったので、建築に詳しい人の感想が知りたい。

字幕:加藤亜弓
吹替版はない模様。
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