★ 手を拡げれば浮かぶやさしさ 幻想
ウソしか僕を救えない
『殺人分析班』シリーズのスピンオフ。
主人公は第一作『石の繭』の重要人物なので、事前に本編鑑賞は必須。犯人探しが主眼のドラマではありませんが、順番を守った方が楽しめると思います。
でも、個人的な嗜好で言えば。
ちょっと主人公には興味がないんですよね…。
同情すべき境遇だと思うのですが、ただの“拗ね坊主”にしか見えないのです。
だから、彼を持ち上げる姿勢は微妙な限り。
なので期待せずに臨みました…が、ある場面でググッと前のめり。なるほど。人生は“哀しみ”だけではないですからね。物語の間を持たせるにも、その方向性はアリです。
しかも、人生なんて勘違いの集積。
そう考えると全てアリアリアリアリ。いやぁ。本作を仕上げた監督さんは上手いですねえ。視聴者が観たいものをキチンと提示してくれます。
それに相変わらず色使いが映画っぽいです。
ロケハンも良い仕事をしていました。アジアを思わせる集合住宅なんて、どこで探してくるのでしょうか。本作の主役は“あの雰囲気”かもしれません。
あと、刑事役の池田鉄洋さんも良い味わい。
僕の中では某ドラマの印象が強いので違和感たっぷりですが、それでも真面目な役もピッタリ。生真面目ゆえに頑なになって道を誤る…そんな背景が透けて見えます。
それと忘れたらダメなのがSUMIREさん。
彼女の着地点も本作の見どころです。というか、存在感からして別次元だな、なんて思ったら浅野忠信さんの娘さんだったんですね。お母さまはCHARAさん。うほ。サラブレッドじゃないですか。今後が楽しみですね。
まあ、そんなわけで。
外伝という立場なので、着地点が分かっている中で如何に盛り上げるか…という苦労を逆手に取った演出が冴える逸品。1話あたりの尺も本編の半分(約25分)なので、本編を楽しんだ後の余韻として捉えれば上々です。
でも、主人公には同情できないんですけどね。