こたつむり

石の繭 殺人分析班のこたつむりのレビュー・感想・評価

石の繭 殺人分析班(2015年製作のドラマ)
3.5
★ 「お母さんはどこ?」

石の繭。それはモルタル漬けの死体。
生命を弄ぶような殺人に意味はあるのか…?
とても丁寧な作りのサスペンスドラマでした。

やはり、WOWOWのドラマは堅実ですね。
予算のかけ方も地上波とは違うので、クライマックス(工場の場面)は映画並みの迫力がありました。

そして、何よりも目玉は主演の木村文乃さん。
あえて1サイズ下のスーツを着た“小動物感”が見事なまでに庇護欲をそそるのです。彼女の作品を観るのは3作目ですが、最も魅力を引き出していた気がします。

また、刑事と言えば相棒。
この選択次第では彼女の良さも消えますが、本作が選んだのは青木崇高さん。いやぁ。この配役がツボでした。ぶっきらぼうな先輩と初々しい後輩という“黄金比”を再現していたのです。

そして、主軸は主人公の成長。
とても緩やかなのが良いのです。
確かにググっと成長すればカタルシスを抱きますが、現実味を失って“クサくなる”可能性もあるわけで。この辺りの微妙な匙加減がセンスだと思います。

それに細かい部分もフォロー済み。
警視庁捜査一課と言えばエリート集団であり、所轄の刑事課を経験していない新人が配属されるのは稀なのですが、その辺りの理由も説明してくれます。これが気配りですね。

ただ、猟奇的な部分については微妙なところ。
あくまでも、モルタル漬けの死体は“導入部”。主軸は成長譚なので、赤黒く光る狂気が見たい…意外性に満ちた犯人を見たい…なんて欲望には応えてくれません。ちっ。

余談ですが「あの工法だと綺麗に象ることは出来ない」と呟いたところ、同席していた家族から冷たい視線が…。確かに本質からズレていますけどね。そんな“猟奇犯罪者”を見るような目をしないでほしいですよ。「固まりかけのモルタルって美味しそうだね」と言ったわけではないのですから。うひひ。

まあ、そんなわけで。
イヤミのない登場人物。破綻のない物語。重力を感じる描写。全5話という適当な長さ。とてもバランスの良い作品なので、期待値を高めずに気楽な姿勢で臨むことをオススメします。
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