こたつむり

翳りゆく夏のこたつむりのレビュー・感想・評価

翳りゆく夏(2015年製作のドラマ)
4.0
丁寧に編み上げられたドラマ。
万人向けである地上波と違って「お金を払ってでも観たい」という視聴者に向けて作っているからか、WOWOWは安定感が違いますね。まさに違いが分かる大人向けです。

だから、配役からして見事な選択。
特に主人公である渡部篤郎さんの存在感が絶妙でした。前に出過ぎず、後ろに引っ込み過ぎず。アクの強さを押し殺した感が次第にクセになってきます。

また、時任三郎さんも素敵でした。
原作者の想いを伝える重要な役柄なんですが、職務に忠実であり、人として真っ直ぐな感じが良いんです。役に合わせて白髪に染めたのも絶妙でした。

あと、ブレイク直前の菅田将暉さんも必見。
正直なところ、オーラが半端じゃないので、物語的には微妙なんですけど、今の活躍っぷりを知っていれば仕方ない話。脇役でも輝く人は輝くんですね。

勿論、脚本も良かったですよ。
ミステリとして捉えると着地点は分かりやすいんですが、大切なのは“その先”ですからね。解答を得てもそれで終わりではないのです。

まあ、そんなわけで。
誘拐犯の娘が大手新聞社に入社する…そんなスクープから始まる物語。ドキドキハラハラ感よりも、過去の事件を地道に紐解いていく丹念さを味わう作品なので、滋味を噛み締める姿勢をオススメします。

最後に余談として。
少し難癖に近いのですが、過去の場面を再現するところで“現代”っぽさを感じたのは残念でした。社宅はイマドキの建売住宅っぽいし、重要な舞台となるショッピングモールも21世紀風なのです。

この辺りは仕方がないところ…なんでしょうね。
20世紀終盤から足踏みしている日本経済ですが、風景は常に変貌するもの。20年前の雰囲気を再現するのは容易ではありません。

ちなみに舞台設定は横須賀。
なので、ショッピングモールと言えばショッパーズプラザ。当時は大規模小売店舗法が廃止される前だったんで、ショッピングモールは物珍しくて御洒落でした。初めて訪れたときに友人が「この駐車場にはロボコップがいる」なんて冗談を言っていたのも懐かしい思い出です。

でも、なんでロボコップだったんだろう?
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