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エミリー、パリへ行く シーズン3の都部のレビュー・感想・評価

3.8
間違いなくシリーズ最高値の面白さを更新した本作は、前期の締めから展開されるエミリーの巴里での環境の変化を軽妙ながらも適切な重みを伴って扱われることで彼女のパーソナリティ性をより克明なものとし、彼女の人生に行き交う人々の人生の分岐点をも魅力的に魅せることに成功していると力強く言えるだろう。

実在するファッションブランドの現代も罷り通る問題を作劇に絡めることで、この業界の機微を物語に組み込んでいるのがまず見事だ。

大企業の資本主義的な態度で繰り返される老舗ブランドの売買や実利優先の営業体系から見られる傲慢を対立軸としておくことで、新鋭の社を設立したエミリー達の快進撃を1.2期とは異なる形で見せていくのはよく考えられている。『旧式』が好まれるフランスの風潮を保ちながらも、現代性を帯びた存在として立ち回っていく姿はエミリーその人の人柄を象徴するようなそれであるし、ここにきて物語が綺麗に噛み合ってきた感覚に陥る。

前期前前期で不調を起こしていた人間関係が整然とした形を得て、水面下で歪みが生じる姿を多層的に描く足取りはそれまでのドラマよりも明らかに面白いものとなっており、良好な関係が回を追うごとに仕事や秘められし内情により破綻していく姿には胸が痛む。その集大成とも言える最終回は非常にドラマチックな惨状を迎え、明らかになる事実が次なるシーズンの期待をも高めて鮮やかに幕を閉じる。うーん……、良い。

エミリーの着用する衣服の美術センスも本シーズンのが一番好きですね。このドラマシリーズの美術は等しく素晴らしいのですが、環境の変化に一喜一憂するエミリーの豊かな感受性が、内面から剥き出しになったような鮮やかな被服の数々はとても印象的だし、そういう面でもかなり好印象だった。SEASON4も楽しみにしてます。
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