都部

エミリー、パリへ行く シーズン1の都部のレビュー・感想・評価

3.7
米国育ちのエミリーが日常/仕事と場所を問わず、巴里の常識に触れることで生じるカルチャーギャップを笑いや展開のフックとする進行は共感性という観点でとても有効に作用している。巴里の美しい街並みや衣服を物語の凝った背景としながら仕事や恋愛の考え方の違いが新鮮味として投影されることで、エミリー同様にまるで視聴者も巴里に移住したような所管が得られる楽しい作品という印象に繋がっているからだ。

保守的な巴里のマーケティングブランドの異質な慣習や姿勢に果敢に異を唱えるエミリーは語り部としての役割を充分に果たしており、それが安易にその場で是とされない脚本のバランスと愛嬌を感じさせる彼女の性格が、そうした物語に伴う臭みを見事に脱臭しているのも良かった。

巴里の文化に触れることで、そこから着想を得て約30分の尺の1話ごとに新旧の価値観を取り込んだ代替案を用意するというテンポのよさはお仕事ドラマとして優秀であるし、提示されるエミリーの案にはしっかりとした妥当性が感じられるというのも作品鑑賞に生じて欲しくない疑問や淀みを適切に削いでいる。

入り交じる人間関係の混雑具合も楽しく、とにかく恋と性に奔放な巴里の人々の恋愛事情の明暗を笑いと共に語り二転三転させる態度も、ドラマにおける中弛みを感じさせない趣向として好印象である。
都部

都部