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今際の国のアリス シーズン2の都部のレビュー・感想・評価

今際の国のアリス シーズン2(2022年製作のドラマ)
3.6
SEASON1が面白かったので配信日には見よう見ようとは思っていたのですが、今回試写会にお呼びいただいたのは嬉しい幸運でした──という訳で最大限ネタバレは避けて感想を。

※(今回は事実上の完結編なので、試写会に際してそれなら原作はオチまでしっかり読み込んでおくのが礼儀かと事前に結末まで読んだ上での感想なので、原作との相違点の有無には触れることがあるので御注意を)

全体を通して映像表現による舞台設定の壮大さは向上している印象で、主にそれがそれまでのゲームと高難度ゲームであるジャック/クイーン/キングの差別化の一役を買っており、デスゲーム物として非常に見応えのある映像に仕上がっています。グロテスク表現も万人が嫌と感じるもそれでも見れる程度の許容範囲内の『グロ』に収めていて、原作からのルール変更──主に映像化にあたりゲームシステムの単純化──も淀みがなく、前半四話の完成度は文句無しに良く纏まっていて素晴らしかったですね。

その要因としてSEASON2の新キャストである山下智久がいて。
その存在感が本シーズンの序盤の流れを力強く牽引していき、映像や演技に締まりを与えているという意味でも物語を色濃い物に昇華している。
また原作の一つの山場である心理戦『どくぼう』の処理の仕方もスマートで、物語の流れが流暢に進行していく小気味良さもありました。

それと比較すると5.6.7.8話はどうにも要所要所で中弛みを感じさせる進行で、登場人物に心情を語らせるシーンを挿入するのが悪い訳ではないのですが、ゲームを見せるのが二の次になっていたりドラマの構成として勢いにブレーキを掛けるような場面があって。
物語がクライマックスを迎える上で、漫画という媒体だからこそ『一話』としてサラリと読める部分を詰め込み過ぎなきらいはどうしてもありましたね。

個人的に原作でも不満点だった♠️の13のゲームを取り扱う七話はその割を大きく食っており、躍動的なアクションの連続は映像的な快楽に恵まれているものの、ドラマとしての面白さがそこにはなく、ラストゲームに向けてのお膳立てを感じる舞台装置的な扱いになっていたのはやはり残念です。迎える最終回も原作の流れにほぼ忠実ではあるのですが、やはり映像としてそれを起こすと執拗さが増していて、本作の優れていたドラマに合わせたスピード感を失ってしまったのは個人的に大きいかなと。

また原作からドラマ化するにあたって単純化されたドラマの割を食っているのが例の結末で、原作最終ページの下りが存在しないドラマはあくまでも『良い話』風で完結しているのは至極残念ではありました。
(そこは本作で度々強調される『生きる』ことに対する意志の表明を、より強固にする幕切れであるので、完全カットはやはり惜しい)。
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