なっこ

パンとスープとネコ日和のなっこのレビュー・感想・評価

パンとスープとネコ日和(2013年製作のドラマ)
3.2
休日の朝にまったりしながら見始めたら止まらなくなった。

足元で丸まったり水飲みに行ったり哲学者みたいな顔して窓の外を眺めたりしている愛犬を合間に眺めながら。

小説で読んだら多分それほど響かない。なぜかセリフを通して聞くと、心にしっくり響いてきて、とても素敵な生き方を教わった気がする。それぞれこの映像の中を生きている人たちから。

人と場所

そして、とき。時間。

問題なのは、自分自身でも生き方でもないのだなと慰められた。自分がその場所にしっくりくるまで、人は旅を続けるものなのだろう。旅をして戻ってきたときにもしかしたら、昔からよく知っていた場所が自分の居場所になるかもしれないし、旅先でもっと違う場所が見つかるかもしれない。これはきっとネコ派の生き方なんだと思う。誤解を恐れずに言えば。愛し方にも生き方にも犬派と猫派があると思ってる。私は猫のような性格だから、一途に思ってくれる愛犬と暮らしていける。ここで、私と、という1択しかない生き方をする愛犬がただただ愛しい。でも、きっと私はそんな風には生きられない。

母娘ふたりで生活していたヒロインの、母が急死するところから物語は始まる。編集の仕事をしていたヒロインはそれなりのキャリア。こういう年齢の女性を主人公にするドラマは少ない気がして、今の自分にはとても合う内容だった。終始誰かに見守られているような不思議なあたたかさがある。人生でも事実誰かが生きている人たちを見守ってくれているのかもしれない。生きているうちは不自由だった人たちが自由に真っ直ぐに愛を注いでくれているのかもしれない、そのときは出来なかった分を。

恋ではなく、ゆるくつながっている人との関係。一緒に働いて、たまにご飯を食べて、おしゃべりして、そんな風に誰かと生きていけるなら、それこそ理想的な世界。

「自分が自分を不自由にしていた、自分が自由になれてはじめて人との付き合いが始まる」

そんな風に気が付けるには、私はまだまだ修行が足りていない。

さよならの後にやってくるもの。
失うことを怖がって、今いるところから離れがたくて、頑なに現状維持ばかりを望んでいる自分がどれほど不自由か。縛られることを一番嫌っているはずなのに自分に不自由をかしてばかりいる自分に気がつかされた。

さよならも何かを見つけにいく旅でもある。だからちゃんと見送ることの出来る自分になっていたいと思った。そのときがきたら。

新しい場所を、自分にも他者にも、必要になれば常に用意できる人でありたいと思う。
なっこ

なっこ