maro

トップナイフ ―天才脳外科医の条件―のmaroのレビュー・感想・評価

3.5
"脳神経外科"に特化した医療ドラマ。

脚本が『医龍』や『コード・ブルー』などを手掛けた林宏司さんなので、専門的でありながらも小難しい内容に終始することなく、登場人物の人間ドラマもしっかり描かれていたのがすごくよかった。

このドラマの面白さは、人類未踏の地である脳を扱っていること、そして、メインキャスト3人の濃さだと思う。

脳の障害が引き起こす症状というのは実に様々。
人の顔が認識できない、3分しか記憶が残らない、麻痺した腕が他人に見えるなど、他のドラマと違って特殊なものが多いんだよね。

骨折や癌といった聞き慣れているものと比べると、「現実にこんなことが起こりうるのか」という驚きが大きい。
そういう意味では、不謹慎ではあるけれど、これまでの医療ドラマと比べると新鮮に映った。

そして、その難解な治療にあたっていくのが東都総合病院に集う3人の優秀な脳神経外科医たち。
脳動脈瘤のスペシャリストでありながら以下2人をまとめる深山瑤子(天海祐希)。
最も模範的な脳外科医に与えられるトップナイフ賞を日本人で初めて受賞した黒岩健吾(椎名桔平)。
外科もカテーテルもこなせる二刀流の西郡琢磨(永山絢斗)。

彼女ら3人が集まった理由は第9話でわかるんだけど、これがまたいろいろ抱えててね〜。
深山先生は、トップナイフを目指すために家族を犠牲にし、夫と娘と別れることに。
黒岩先生は、孤高の独身で女性関係が派手だけど、ある日突然「あなたの子よ」と小学生の子供を押し付けられ、関わり方にとまどうことに。
西郡先生は、女性心臓外科医の第一人者だった母親の影に怯えることに。

患者の治療を行いながら、彼らがどうやって自らの抱える複雑な事情と向き合っていくのかというのが毎週とても楽しみだった。

最終回まで観て思ったのが、結局優秀な医者と言えどもひとりの人間であるということ。
それぞれの葛藤や悩みとの向き合い方は、普段の生活の中でも見習うべきところはあるように思える。

トップナイフを目指すことは誰にも譲れないという強い信念を持ち、でも娘に対する愛は変わらないということを言葉と行動で証明した深山先生。
自分の子供ではなかったけど、少年がいじめられていることから幼き日の自分と重ね合わせ、人になめられない強さを身に付けることを伝えた黒岩先生。
自分には才能がないことを認め、何者でもないことを受け入れることで、母親の呪縛から解放された西郡先生。

10話という限られた話数の中で、3人が目の前の現実から目を背けずにしっかり正面からぶつかった(ぶつからざるを得なかった)姿勢は共感できるところもあった。

こう見ると、全体的にシリアスな雰囲気のように思えるけど、それをいい具合に崩してくれるのが新人の小机幸子(広瀬アリス)。
医学部を首席で卒業する頭のよさがありつつもどこか抜けており、仕事での失敗やバーの店長との恋路など、笑える要素があったのもこのドラマの魅力。
もちろん、彼女にも葛藤があり、それを乗り越えて行くんだけど。

あと、手術シーンがリアルだったのも見逃せないポイント。
脳だからさ、頭皮はがして、ドリルで頭蓋骨削るんだけど、粉が舞ってしまうので、それを抑えるために水を垂らしながら進めているところが臨場感あった。

あくまでも素人目だけど、人間模様から手術現場に至るまで物語内のいろんな要素が作り込まれていて、とても見ごたえのあるドラマだったなあ。
maro

maro