こたつむり

池袋ウエストゲートパークのこたつむりのレビュー・感想・評価

池袋ウエストゲートパーク(2000年製作のドラマ)
4.5
堤幸彦監督作品の中で最高峰。
原作や脚本の良さ、配役(現代の目線で捉えると本当に豪華)、主題歌、時代の雰囲気…何もかもが追い風となっていて、イケイケドンドンなのです。

例えば、主題歌の『忘却の空』。
名曲があれば名作とは限りませんが、名作には必ず名曲があるもの。しかも、楽曲だけに頼り切っていないのも見事です。

それはオープニングの演出に顕著。
第1回目はイチゴ、第2回目はニンジン…とその回の数字にちなんだモチーフは何なのか…と推理するところから堤ワールドに惹きこまれているんですね。本当に小ネタが好きな御方です。

それでいて伏線をしっかりと張った脚本。
リカという女の子が殺された…その事件をきっかけに、主人公が様々な事件に巻き込まれていのですが、最初から最後までキッチリと構成されているので納得度が違います。

特にスゴいのが視聴者の印象を利用したこと。
格好いい、ウザい、可愛い、優しい、怖い、変…そんなイメージを登場人物に刷り込み、その想いが昇華するように終盤は物語が加速。正直なところ、ラスト2回を支配する空気の重さは窒息するレベルでした。

また、役者さんたちも感嘆の極み。
渡辺謙さんや長瀬智也さん、加藤あいさんは然ることながら、一番スゴいのは窪塚洋介さん。本作が代表作と言われるのも納得です。最初はミスマッチ感が半端なかったんですが(それを言えば加藤あいさんも同じですが…)着地点で全てを回収されたらぐうの音も出ません。

まあ、そんなわけで。
素人探偵ドラマの最高峰。
主人公たちがアウトロー(カラーギャングの仲間)なので、道徳を貴ぶ向きには相性が悪いと思いますが、若さが招く暴発や中途半端さもキッチリと描いていますので、食わず嫌いはモッタイナイです。

それに現代では描けない表現もチラホラと。
本作を観賞していて再認識したのですが、現代の創作物に対する姿勢は“息苦しい”の一言に尽きます。制約がある中で如何にして描くか…という姿勢も大切ですが、無闇に抑えつけるのも違う話。まさに本作は『忘却の空』なんですな。
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