むぅ

愛の不時着のむぅのレビュー・感想・評価

愛の不時着(2019年製作のドラマ)
4.2
「結局、"春"は何だったんだよ!って事しか記憶にない」

韓国の恋愛ドラマ、『冬のソナタ』以来である。
当時「観て!」と紙袋にたくさん入ったVHSを突然持たされた。
同世代の友人ならば「いや、いい」と言えたが、そうもいかない感じの関係の方だった。
まさか観ずに返すわけにもいかない。ちゃんと観て「面白かったです」とお返しした。
「次はこれね!」
「!」
恐る恐る新しい紙袋を覗くと、そこには『夏の香り』なるものが、こちらを見上げていた。
観た。
「面白かったです」
「次はこれね!」
「!!!」
もう紙袋を覗かなくったって分かる。絶対に"秋"か"春"が待機しているはずである。
『秋の童話』
そうきたか。春夏秋冬を疎ましく思った、人生で初めての瞬間であった。観た。
「面白かったです」
「良かったぁ!でもやっぱり"冬ソナ"だよね」
「そうですね」
「また面白いのあったら貸してあげるね」
「!?」
えっ、"春"は?!
観たいわけじゃない!でも!
ここまできたら『春の"なに"』なのか気になるではないか。

という事があったのはかなり昔。
今更ながら『愛の不時着』を観ているとう話を職場でしていた。
『愛の不時着』の前半の舞台は北朝鮮なのだが、そこをコミカルに描くために韓国との違いを"韓国ドラマのあるあるネタ"を巧みに使い、笑わせつつもどこまで忠実なのかは不明だが北朝鮮の現状を見せてくれる。
韓国ドラマに詳しくなくても"冬ソナ"のざっくり内容さえ知っていれば、韓国ドラマのあるあるネタで笑えるから"冬ソナ"って凄いよねという流れになり、この事を思い出した。

その恋愛ドラマに夢中になるか否か。
若い頃は相手役のお顔が自分の好みかどうかに重点があった。
いやもう今更ここで言うのも大変に失礼な話だが、若かりし頃の私は、微笑みをたたえる穏やかそうなヨン様をちょっと胡散臭いと思っていた。申し訳ない。
その点からすると実はヒョンビンも個人的にはそこまで惹かれるお顔立ちではない、というのが本音。けれども彼の演じるジョンヒョクが、まぁ可愛くてカッコいい。彼が心にある傷と、彼女への想いに対してどんどん素直になっていくのが愛おしい。
そしてハンガーというよりも、衣紋掛けレベルの広い肩幅が良い。
ドラマや映画で"机も壁もない状況で誰かの背中を使ってチャチャっと紙にサインする"というシチュエーションをたまに見かけるが、彼の背中ならサインと言わずちょっとした文章も書けそうな感じの広さであった。良い。


「コバエの羽に見えない?」
「いやポール牧」
親指と人差し指の腹をクロスさせる"きゅん"の指ハートが登場する。
[手を使ってハートを作れ]
という指示を受けたら、両手の親指と人差し指でハートを象るタイプの世代なので、初めて指ハートを知った時はザワついた。
今でも人によってはコバエの羽にもポール牧にも私には見える指ハートなのだが、そうは見えずこちらもきゅんとしてしまう使われ方がまた良かった。特に最終話でのそれが素敵だった。

私にとっては韓国と北朝鮮はもう全く別の国という印象なのだが、ドラマの中で北朝鮮の人たちが韓国を決して韓国と言わず、南朝鮮ということも印象に残った。
また"涼しいところ"と表現されていた強制収容所のことも気になる。それが描かれている『トゥルーノース』も観なくてはと思った。

もう今後、戦う時はスーツとチェスターコート着用を義務化して欲しいと思うほどに、スーツでのアクションはカッコいい。
そう言えば惹かれる男性の仕草に長らく"ネクタイを緩める"がノミネートされていた事を思い出した。"あるある"も"ベタ"も大好きなのだ。
そんな"ベタ"がたくさんあって楽しい。

「主演の2人が結婚したからNetflixで観られてるランキングの10位になってんのかなぁ」
「そうかもね」
「いやーきゅんとしたわー」
「あの2人の身長差がまた良いんだよね」
「わかる」
「特に"あすなろ抱き"の時」
「古っ。"バックハグ"でしょ」
「"きゅんです"をコバエって言ったむぅに言われたくないわ」
「ですよね」
「で、結局『春の"なに"』だったわけ?」
「ワルツ」

『愛の不時着』は、例え"DVD"と入力しながら(V...VHS!!そんな時代があった)と思うような存在になるほどに時が流れても、内容は忘れないと思う。
面白かった。
むぅ

むぅ