むぅ

ファーストレディのむぅのレビュー・感想・評価

ファーストレディ(2022年製作のドラマ)
4.4
「わかったぁ!ベスだ!」

頑張ったら思い出せそうな事をすぐ調べると脳細胞が死んでくらしいっスよという呪いの言葉をかけられてから、俳優の名前や出演作品はなるべく脳みそを振ったり絞ったりして自力で思い出そうと頑張るようにしている。
「絶対観たことある...」
芯の強さのある内気な表情が抜群に上手いなと思うこの俳優、一体何で観たのだろうか。
悩むこと3日。
帰宅途中の電車でやっと思い出し、嬉しさのあまり隣に座ってる方に報告したいくらいだった。
彼女は『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のベスだった。映画館であんなに泣いたくせに、なんと私の薄情なことか。
そして今作では彼女は、エレノア・ルーズベルトの若い頃を演じている。


エレノア・ルーズベルト、ベティ・フォード、ミシェル・オバマ。"ファーストレディ"と呼ばれる事になった彼女たち、それぞれの物語を実際に当時の映像を交えながら描く。


"ファーストレディ"
そう呼ばれることになった人の物語はジャクリーン・ケネディの『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』しか観たことがなかった。そしてその物語は彼女の人生の中で、衝撃というような言葉では言い切れない出来事を切り抜いている。
一方、こちらの3人の物語は幼少期から、"ファーストレディ"として暮らす日々そしてその後まで描く。

実際にお話する映像を見たり聞いたりした事があるのはミシェル・オバマだけ。
でもミシェル・オバマのパートを観るだけで、交互に映し出される他のお2人も相当再現度が高いのではないかと思った。ミシェル・オバマを演じたヴィオラ・デイヴィスは見事に画面の中で彼女として生きていた。

"ファーストレディ"
私としては"大統領夫人の呼び名"としか認識していなかったが、その呼称から彼女たちにかかる期待や重圧そして制圧が描かれる。
そしてそれは彼女たちが"ファーストレディ"として過ごす時間ではなく、エレノア、ベティ、ミシェルとして過ごす時間に色濃く出る。
興味深かったのは、自分は"ファーストレディ"だと最も口にするのはミシェル・オバマ、他人から"ファーストレディ"と呼ばれると表情の変わるベティ・フォード、そして"ファーストレディ"という言葉に反応さえしていないように見えるエレノア・ルーズベルト。
それぞれの信念や生き方の違いだけではなく、時代や人種の影響が少なからずある事が見て取れる。
彼女たちの物語の中で、"ファーストレディ"というものが全く違うものとして位置付けられているからこそ、この3人が選ばれたのだろうなと思った。
そして、そりゃそうかとも思う。
パートナーとして、親として、子としてだって認識や価値観や生き方は人それぞれ皆違うもの。
"ファーストレディ"のそれが同じなわけがない。

そこからはどんな景色が見えて、どんな物語を紡いでいくのだろうかという興味から観たが、想像もつかないような光景と自分も体験したことのある何かを見られた。
面白かった。
"ファーストレディ"全員分観たいと思うほどに。





エレノア・ルーズベルト(1884年10月11日〜1962年11月7日)
パートナーは32代大統領フランクリン・ルーズベルト(在任:1933年3月4日〜1945年4月12日)

ベティ・フォード(1918年4月8日〜2011年7月8日)
パートナーは38代大統領ジェラルド・R・フォード(在任:1974年8月9日〜1977年1月20日)

ミシェル・オバマ(1964年1月17日〜)
パートナーは44代大統領バラク・オバマ(在任:2009年1月20日〜2017年1月20日)
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