むぅ

梨泰院クラスのむぅのレビュー・感想・評価

梨泰院クラス(2020年製作のドラマ)
4.0
神さま、私にセンスをください。

人のあれそれに、とやかく言える立場じゃない。わかってる。
でも、どうしても気になる。

そ、その前髪は合ってるの...?
途中で慣れるからと友人に言われたものの、整ったお顔立ちの上部に君臨する直線の前髪を見つめ続けた全16話。
慣れなかったんですけど。

小2以降、前髪に"分け目"をつくらなかった事がない。
幼稚園の入園式、桜が満開の中花びらを食べたかったのか?というレベルで口を半開きにしてよそ見をしている集合写真も、七五三で家族三人着物でキメながら両親が自分達の写りしか気にせず主役の私が父の影に隠れて"家政婦は見た!"状態になってる我が家の伝説の写真も、小学校の入学式の前日両親の喧嘩が勃発し暗い顔をした母と緊張で強張ってる私のとてもじゃないが"晴れの日"ではなく"暗雲立ち込める"写真も、私の髪型は同じだ。

[こけし]のそれである。

母には感謝しかないが恨み言を言うならば、ニコニコしながらハサミを持ち楽しそうに娘を[こけし]に仕上げていたことかもしれない。
何のこだわりがあったのか知らないが、前髪にビーッとセロハンテープを真っ直ぐに貼り付け、それにそって切るという地味な虐待を受けていた。
幼稚園ながらに絶対この切り方おかしいと思いつつ、反乱の機会を狙い続け小2の時に達成した。
前髪を伸ばす!と反旗を翻した娘に
「お人形さんみたいで可愛いのに」
と真顔で仰るので
「こけしはお人形じゃない!お人形ならリカちゃんとかジェニーちゃんがいい」
と申し上げ勝利を収めた。
前髪革命。

そんなある種のトラウマが蘇るパク・セロイの前髪。

神さま、母のセンスは正しかったということですか。


父親の命を奪われた主人公パク・セロイが誓った復讐。
彼が立ち上げた居酒屋「タンバム」を舞台に仲間たちと、仇である業界トップの大物へ戦いを挑んでいく。

あらすじ...と考えて上記のようにまとめてみたものの、最初に浮かんだのは下記の文章だった。

[妖怪:どうしても土下座させたいおじさん]と[梨泰院って時間軸が違うのかしらと不安になるほどに一途な想いを長年貫きまくる仲間たち]の物語。

桃太郎よろしく鬼退治に向かうわけだが、そこにある"きびだんご"は"何よりも仲間が大切、人と信頼が大切"という最強の"きびだんご"。
自分の信念を貫くパク・セロイが良い。頑なだったその姿勢が仲間との関係により、しなやかな強さになっていくのも、また良い。

個人的に印象に残ったのは仲間の一人である、父が韓国、母がギニアというルーツを持つトニー。
母に似た外見から「僕は韓国人だよ」と何度言っても仲間にさえ、なかなか受け入れられない様が描かれる。苦しい。でもこういう現実はとても多いのだと思う。
『六本木クラス』として日本版リメイクがされると聞いたが、このトニーとトランスジェンダーのヒョニはしっかり描いて欲しいと心から願う。当事者である方に演じてもらいたい。というか、そこをきっちり描けるならそれだけでリメイクの意味があるんじゃないかな、とさえ思う。そうしてくれたら、竹内涼真の前髪には文句を垂れない事を誓いたい。

「あのやたら振ってる緑色の瓶のお酒飲みたい」
「チャミスルね」
お勧めしてくれた友人達とGW明けに韓国料理に行くことが決まった。仲間がいることの幸せよ。
でも酔っ払ったら、おそらく文句を垂れるだろう。
「誰か一人でも『梨泰院クラス』の舞台が居酒屋だって教えてくれた?それ聞いてたらもっと早く観たのに!」
むぅ

むぅ